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事業を承継した場合の従業員の待遇はどうなるの???

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M&A 事業引継ぎ
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資金調達コンサルタント/社会保険労務士 大学卒業後、中小企業支援の志を持って北海道拓殖銀行に入行。融資業務を担当して経営を学ぶ必要性を感じ、行内選抜を経て、日本生産性本部主催、経営コンサルタント養成基礎講座に出向。認定経営コンサルタント資格取得をして銀行に戻るも、経営破綻。中央信託銀行に就職したが、中小企業支援への想いは忘れられず、悶々とした日を過ごす。 その間、社会保険労務士、行政書士、FP1級、宅建士を取得し、独立を意識する。 55歳を機に三井住友信託銀行を退職し、札幌商工会議所の経営指導員を経て独立。 若き入行時の志を現在実行中。

労働承継法

事業承継の形態

事業承継には2つの形式があります。一つはオーナーが所有している株式100%を全て譲り受ける方法と会社の一部を分割して分割した事業を引き継ぐ方法です。

株式100%の承継は雇用者(会社)が変わらないので契約はそのまま有効なため問題が発生することはありません。分割承継する時に、承継される従業員の処遇が問題になります。なぜならば、雇用者が変更になり、引き継がれる会社の労働条件が違う可能性が高くなるからです。

その際、適用されるのが労働承継法です。労働承継法は、従業員の雇用の安定を図ることを目的として制定された法律であり、企業の再編に伴う従業員の利益を保護するための法律として重要な役割を果たしています。

具体的には以下の規定が盛り込まれています。

・従業員の雇用継続の義務:事業譲渡や合併により従業員の雇用が失われる場合、譲受先企業が原則として従業員を引き継ぐ義務があります。ただし、引き継ぎが困難な場合は、従業員に対して適切な解決策を提供することが求められます。

・従業員への情報開示・協議の義務:事業譲渡や合併の場合、譲渡先企業や従業員に対して、事前に情報開示を行い、合意形成を目指すことが求められます。

・従業員の待遇継承の原則:
引き継ぎされた従業員に対して、前の企業での労働条件や待遇が継承されることが原則とされています。ただし、事業上の必要性などにより、一部の待遇が変更される場合もあります。


・不当な解雇の禁止:
従業員の引き継ぎ後に、不当な理由で解雇することは禁止されています。従業員の雇用を安定させることが法律の目的の一つであるため、不当な解雇を行う企業には制裁が課せられることがあります。

分割する時の手続き

労働契約承継法で定められている対象は分割する会社が雇用している労働者全員を指しています。正社員だけでなく契約社員やパート、アルバイトなど雇用形態に関わらず全ての労働者に対して労働契約承継法の規定に沿った手続きを行います。条項は主に以下の内容です。

・労働者や組合への通知(2条)

・分割会社は、分割に当たり、雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする(法7条)。

・分割会社は、分割契約等を締結し、又は作成する日において、承継される事業に主として従事する労働者を判断し、その結果を記録すること(法8条)。


・分割会社は、分割契約等を締結し、又は作成する日から分割日までの間に、承継される事業に主として従事する労働者に対して、分割後に勤務することとなる会社の概要等を十分説明し、本人の希望を聴取した上で、個別協議を行うこと(法9条)。


・分割会社及び承継会社は、分割日から1年以内に、承継される事業に主として従事する労働者の給与等の待遇が分割前と同等以上であることを確保すること(法10条)。

業務が変わる労働者は異議申し立てが可能

会社分割によって労働者が不利益を被ることになる場合、労働者は異議申し立てが可能となります。異議申し立てができる労働者は以下のいずれかに該当する場合です。

・主従事労働者を分割会社に残留させる場合
・非主従事労働者を承継会社等に承継させる場合

異議申し立てを行う場合には、分割会社に対して書面によって提出します。異議申し立てを行うと申立書は法的根拠を持つことになります。主従事労働者を分割会社に残留させる契約等だった場合に、異議申出がなされた場合には、労働条件が維持されたまま、承継会社等に当該労働契約が承継されることになります。非主従事労働者を承継会社等に承継させる契約等だった場合に、異議申出がなされた場合には、労働条件が維持されたまま分割会社に残留することになります。

労働承継の流れ

1.M&Aの契約締結時に労働承継の方針を決定する
M&Aの契約締結時に、取引相手企業と従業員を保護するための労働承継の方針を決定します。具体的には、承継元企業と承継先企業の従業員の扱いを明確にします。

2.従業員に通知する
従業員に、労働承継の方針や内容を通知します。この際には、従業員の意見や要望を聞き入れることも重要です。

3.取引相手企業と合意を交わす
労働承継に関する取引相手企業との合意を交わします。この際には、従業員の雇用条件や待遇の継続、従業員の同意が必要な場合は同意の取得などが含まれます。

4.労働条件の調整
承継元企業と承継先企業で、従業員の雇用条件や待遇の調整を行います。具体的には、給与、勤務時間、休暇、福利厚生などの調整が含まれます。

5.従業員の同意を得る
従業員の同意を得ます。労働契約に基づく合意書の署名などが必要になる場合があります。また、同意を得るためには、従業員に対して十分な説明を行い、不安や懸念を解消することが必要です。

6.承継後の従業員の保護
M&Aが完了した後も、承継後の従業員を保護することが重要です。具体的には、従業員の待遇や労働条件を継続すること、労働組合との協議を行うこと、従業員の再配置や再教育を行うことなどが含まれます。

労働承継における注意点

労働承継においては、次のような注意点があります。

1.法令に違反しないようにすること
労働契約法や労働基準法などの法令に違反しないようにすることが重要です。具体的には、承継元企業と承継先企業で従業員の待遇や労働条件の調整を行う際に、法令に基づいた調整を行うことが必要です。

2.従業員の保護を徹底すること
従業員の保護を徹底することが必要です。具体的には、承継後の従業員の待遇や労働条件を継続すること、従業員の同意を得ること、労働組合との協議を行うことなどが含まれます。

3.M&Aの目的を明確にすること
M&Aの目的を明確にすることが重要です。具体的には、労働承継を行う目的、労働条件の調整の目的、従業員の保護の目的などを明確にすることが必要です。これにより、労働承継に関する課題を明確にし、効果的な対策を取ることができます。

4.コミュニケーションを重視すること
M&Aに伴う労働承継では、承継元企業と承継先企業、従業員、労働組合など、多くの関係者が関与します。そのため、コミュニケーションを重視することが必要です。従業員や労働組合との適切なコミュニケーションを行い、不安や懸念を解消することが大切です。

5.専門家のアドバイスを受けること
労働承継には、法律や労働条件など、様々な専門的な知識が必要です。そのため、労働承継に関する専門家のアドバイスを受けることが重要です。弁護士や労働法務士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることで、労働承継の成功につなげることができます。

まとめ

M&Aに伴う労働承継は、承継元企業、承継先企業、従業員、労働組合など、多くの関係者が関与する複雑な取引です。そのため、法令に違反しないように注意しつつ、従業員の保護を徹底し、コミュニケーションを重視することが必要です。また、専門家のアドバイスを受けることで、労働承継の成功につなげることができます。労働承継は、取引相手企業との合意から、従業員の同意を得るまで、多くの手順が必要です。事前に十分な準備を行い、問題が発生した場合には迅速に対応することが大切です。

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資金調達コンサルタント/社会保険労務士 大学卒業後、中小企業支援の志を持って北海道拓殖銀行に入行。融資業務を担当して経営を学ぶ必要性を感じ、行内選抜を経て、日本生産性本部主催、経営コンサルタント養成基礎講座に出向。認定経営コンサルタント資格取得をして銀行に戻るも、経営破綻。中央信託銀行に就職したが、中小企業支援への想いは忘れられず、悶々とした日を過ごす。 その間、社会保険労務士、行政書士、FP1級、宅建士を取得し、独立を意識する。 55歳を機に三井住友信託銀行を退職し、札幌商工会議所の経営指導員を経て独立。 若き入行時の志を現在実行中。

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