2022年10月より雇用保険料引き上げ!!!給与計算はご注意を
2022年度予算案が衆議院通過 年度内成立が確定
2022年度予算案は2022年2月22日の衆院本会議で、自民、公明、国民民主の各党などの賛成多数で可決され、衆院を通過しました。憲法の衆院優越規定により、参院送付後30日で自然成立するため、年度内の成立が確定しました。2月22日の衆院通過は戦後最速だった1999年度小渕内閣の予算案2月19日に次ぐ早さ。参院審議は24日から始まっています。
厚生労働省の一般会計予算
厚生労働省の一般会計予算は前年度から3,781億円増の33兆5,160億円。令和3年度補正予算とあわせた「16か月予算」として、コロナ禍における企業の雇用維持を支援する一方で、危機的な財政状況にある雇用保険制度に関しては雇用保険法等を改正し、保険料率や国庫負担あり方が見直されています。このほか「人に関する投資」を促す観点から処遇改善や人材育成にも注力しています。
雇用保険制度の財政状況
コロナ禍における雇用維持に大きく貢献してきた雇用調整助成金等の支給実績は、令和4年1月時点で5.2兆円を超えました。雇用調整助成金等及び産業雇用安定助成金による雇用維持が雇用対策の柱の1つとなりますが、財源となる雇用安定二事業の資金残高は令和2年度末で枯渇し、二事業への貸出を行ってきた失業給付の積立金もほぼ尽きます。
こうした状況を踏まえて、国庫負担、雇用保険料の引上げが実施されます。
雇用保険料って何に使われているの?
雇用保険料の使いみちですが、理解し易いように説明しますと、主に3つの事業を実施しています。
3つの事業とは以下のとおりです。
1,失業給付
①労働者が失業した場合、②労働者に雇用の継続が困難となる事由が生じた場合、③労働者が自ら教育訓練を受けた場合に、生活および雇用の安定と就職の促進を図るための給付を行っています。
2,育児休業給付
①子どもが生まれてから1歳未満の子どもがいる間だけ支給されます。延長事由がある場合には1歳6ヶ月または2歳に達するまで支給対象期間を延長できます。
3,雇用保険二事業
失業の予防、雇用機会の増大、労働者の能力開発などを図るための事業を行っています(例:雇用調整助成金)。
雇用保険二事業とは!!!
雇用保険二事業の目的は、失業の予防、雇用機会の増大、労働者の能力開発等に資する雇用対策です。主な事業は以下です。
雇用保険制度の危機的な財政状態は雇用安定事業の事業主に対する助成金のなかで、雇用調整助成金額が5兆円を超えて支出していることが原因です。
1,雇用安定事業
①事業主に対する助成金
・若年者や中高年齢者の試行雇用を促進(試行雇用奨励金)
・高齢者や障害者を雇用する事業主を支援(特定求職者雇用開発助成金)
・創業や雇用を増やす事業主を支援(自立就業支援助成金、地域雇用開発助成金)
・失業予防に努める事業主を支援(雇用調整助成金)
・仕事と子育ての両立を支援(育児・介護雇用安定等助成金) 等
②中高年齢者等再就職の緊要度が高い求職者に対する再就職支援
2,能力開発事業
①在職者や離職者に対する訓練
②業主が行う教育訓練への支援
③職業能力評価制度の整備
④ジョブ・カード制度の構築
雇用保険料の負担割合
3つの雇用保険事業ごとに事業者と雇用保険加入者との費用負担が決められています。
・失業等給付に充てる部分:労使折半
・育児休業給付に充てる部分:労使折半
・雇用二事業に充てる部分:企業負担
雇用保険料率の引上げスケジュール
令和4年度の予算では、雇用保険財政の危機的な状態を解消するために雇用保険料率が引上となります。スケジュールについては下記のとおりです。
一般の事業の場合の雇用保険料率
令和3年度の雇用保険料の事業者、被保険者負担割合
令和4年度の雇用保険料率
令和4年度の雇用保険料率は年度途中の10月から引き上がります。
●令和4年度の雇用保険料率
上半期(令和4年4月~9月)
事業 | 保険料率 | 事業主負担分 | 労働者(被保険者)負担分 |
一般の事業 | 1000分の9.5 | 1000分の6.5 | 1000分の3 |
農水・清酒 | 1000分の11.5 | 1000分の7.5 | 1000分の4 |
建設の事業 | 1000分の12.5 | 1000分の8.5 | 1000分の4 |
下半期(令和4年10月~令和5年3月)
事業 | 保険料率 | 事業主負担分 | 労働者(被保険者)負担分 |
一般の事業 | 1000分の13.5 | 1000分の8.5 | 1000分の5 |
農水・清酒 | 1000分の15.5 | 1000分の9.5 | 1000分の6 |
建設の事業 | 1000分の16.5 | 1000分の10.5 | 1000分の6 |
給与計算はどのようにすればいいの
労働保険料は社会保険と違って賃金締日ベースで考えます。例えば、毎月15日を締日としている事業所は9月15日までは、旧の料率を適用し、10月15日締日の分から新料率を適用します。
気をつけましょう。
20年ぶりの追加徴求はある?
保険年度の途中で保険料率が引き上げとなると、「追加徴収」が行われるのかも気になるところです。
追加徴収とは、保険率が年度の途中で引き上がった場合に、その引き上げ分の保険料を徴収することができる仕組みです。
過去に年度途中で雇用保険率が引き上げられた例をみると、平成14年度の例があります。
平成14年度は、「雇用保険財政は現在非常に厳しい状況にあり、雇用失業情勢、雇用保険受給者の動向によっては積立金が平成14年度後半に枯渇するおそれがある」として、10月から雇用保険率の引き上げが行われて「追加徴収」が実施されました。
もし今年追加徴収が行われるとすれば、20年ぶりということになります。
今後、令和4年度の労働保険料の納付方法が詰められると思いますが、注目したいところです。
「人への投資」を促す施策
令和3年11月に閣議決定された経済対策では、分配戦略の一環として「人への投資」を抜本的に強化する方針が打ち出され、看護、介護、保育などの現場で働く人の処遇改善が盛り込まれました。
看護職員処遇改善策
新型コロナウィスル感染症の患者に対する医療など、一定の役割を担う医療機関に勤務する者を対象に、令和4年2月から9月まで収入を1%(月額4,000円程度)引き上げるための措置(看護職員等処遇改善事業補助金)を創設。賃上げ効果が継続されるよう、補助額の3分の2以上をベースアップ等に使用することなどを要件に、その費用は全額国庫から充てられる。10月以降は、令和4年度の診療報酬改定において収入を3%(月額1万2,000円程度)引き上げる仕組みを講じます。
介護・障害福祉職員等の処遇改善策
令和4年2月から9月まで収入を3%(月額9,000円程度)引き上げるための措置(福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金)を創設。看護職員と同様、交付額の3分の2以上をベースアップ等に使用することなどを要件に、10分の10が国庫から支払われます。10月以降は臨時の報酬改定を行います。
このほか保育士・幼稚園教諭等の処遇改善は、内閣府の予算案で計上。令和4年2月から9月まで収入を3%(月額9,000円程度)引き上げる保育士・幼稚園教諭等の処遇改善臨時的特例事業を実施し、10月以降は公定価格の見直しで対応します。
助成金の充実
人材開発支援助成金や雇用保険の教育訓練給付の枠組みを活用しながら、3年間で4,000億円規模の施行を講じています。人材開発支援助成金では、IT技術の知識・技能を習得させるための訓練(ITSSレベル2)を特定訓練コースの対象に追加しました。また、こうした特定訓練コース等の訓練終了後に正社員化した場合、キャリアップ助成金正社員化コースにおける助成金が加算されます。
こほほか、リカレント教育の促進に向けて教育訓練給付の対象講座を拡大。成長分野への労働移動を支援するトライアル雇用助成金も拡充されています。
まとめ
世界的に最低賃金は引き上げられる方向になります。わが国も昨年は29円引上げとなりました。今年も同程度引上げられることが予想できます。また、2022年10月から従業員が101人以上の企業については、パート社員にも社会保険が適用が拡大されます
一方で、従業員の給与を引き上げると、税額が控除されたり、事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金等の補助金や助成金については、採択され易くなったり、金額が増額されたりとメリットもあります。
労務費については経費とみるのではなく、投資と考えてみてはいかがでしょうか?
社員をしっかりと教育し報酬も支払う代わりに、現状よりレベルの高い仕事をしてもらう人事制度なり、仕組を会社に作られたらいかがでしょうか。