70歳定年延長にみる日本の年金財政と今後の働き方
令和3年4月高年齢者雇用安定法の改正点
改正点は下記の通りです。
65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、以下のいずれかを講ずる努力義務を新設(令和3年4月1日)施行。
①70歳までの定年引上げ
②定年の廃止
③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献制度
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
高年齢者雇用安定法の改正の背景
2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(出生中位・死亡中位推計)
社会保険労務士として思うこと
日本の人口減少のトレンドで思うことは、間違いなく年金財政がひっ迫することです。勘違いされている方が多いと思いますが、年金給付金の財源は過去の自分の積み立てたお金ではないことです。現役世代の負担している社会保険料が高齢者の年金として給付されていることです。現在の年金積立金は過去余った社会保険料の積立金です。それも現在の給付額から考えるとかなり少ない積立です。年金給付金の原資は毎月入ってくる現役世代の社会保険料です。現在、この社会保険料からの収入と年金給付金の支出の収支バランスは保たれていますが、今後の人口推移によっては、支出超となり、積立金の取り崩しを検討される時が来ます。
年金財政が安定するために行っている政府の施策は以下のことだと思います。
・外国人労働者の受け入れ
・パートなどの主婦にも社会保険料を負担してもらう(こちらも改正)
・高年齢者にも長く働いてもらう(今回の改正)
労働人口が減少してゆく日本の中で、企業が生き残るためにすべきこと
生産性の向上(人で不足の対応)
ITや機械の導入により生産性を向上させることです。機械やITの導入により時間短縮や品質の向上が図れるのならば、積極的に導入するべきです。
お金がないとおしゃる経営者は多いとおもいますが、補助金(持続化補助金、IT導入補助金、ものづくり補助金)や、助成金(働き方推進支援助成金)をうまく活用して、人手不足の対策をするべきです。
組織力を高めること
労働人口が減少するため、いろいろな働き方をしてもらって組織を維持していかなければなりません。例えば、子育てをしている主婦、介護をしている高齢者、病気治療をしながら働く方、障害をお持ちの方、それぞれの働き方にあった職場環境を提供しなければなりません。
その時になにが起こるのか、それは組織の遠心力が働き、バラバラになる可能性が高いということです。多様性を尊重するということは、組織がバラバラになりやすいことです。その時に組織がまとまっていることが大切です。組織をまとめることは容易ではありません、時間がかかります。しかし、現在は待つことが出来な時代でもあります。
組織を活性化させるための3つのプロセス
組織を活性化させるにはいろいろな方法がありますが、結局は3つのプロセスを必ず経ることになります。その3つとは、「見える化」「ガチ対話(ガチンコで真正面から対話をすること)」「未来づくり」
「見える化」とは自分の組織の、チームの問題点を見える化することが、第一点です。第二に、この見える化した問題を関係者一同で「ガチ対話」することです。当然そこには、コンフリクトが出てきます。組織開発は修羅場です。第三は「未来づくり」です。「自分のチームとか組織は今後どういうふうにありたいのかということをみんなで決めていくということ」です。この3つを経るということが、組織開発には必要です。
企業風土
上記3つのコミュニケーションをするためには、企業の中にいて安心できる、グーグルの言った、心理的安全性を確保することが非常に大切です。では、そのためにはなにをすればよいのかという質問になると思いますが、明確な答えはありません。ある会社では朝礼でペアーになりお互いによいことを褒め合うという時間を作っているところもあります。いずれにしろ、社員に対するリスペクトがないと心理的安全性の確保は難しいと思います。
NHKの番組で「逆転人生」という番組があります。その中で2015年ラグビーのワールドカップで、日本代表が南アフリカに逆転勝利を収めた時の影の立役者であった、スポーツ心理学者の荒木香織さんの物語にチームビルディングの大切さが描かれています。質問の仕方やアドバイスの仕方で人間がこれほど変われるのかと感心させられました。オンデマンドで見れる方は是非見てください。非常に参考になります。