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札幌 社労士のブログ

エンプロイーエンゲージメントにおける経営労務監査の役割

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エンプロイエンゲージメント
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資金調達コンサルタント/社会保険労務士 大学卒業後、中小企業支援の志を持って北海道拓殖銀行に入行。融資業務を担当して経営を学ぶ必要性を感じ、行内選抜を経て、日本生産性本部主催、経営コンサルタント養成基礎講座に出向。認定経営コンサルタント資格取得をして銀行に戻るも、経営破綻。中央信託銀行に就職したが、中小企業支援への想いは忘れられず、悶々とした日を過ごす。 その間、社会保険労務士、行政書士、FP1級、宅建士を取得し、独立を意識する。 55歳を機に三井住友信託銀行を退職し、札幌商工会議所の経営指導員を経て独立。 若き入行時の志を現在実行中。

エンプロイエンゲージメント

エンプロイーエンゲージメントの背景

金融資本主義から人財資本主義へ

大きく二つの流れがあります。

一つはリーマン・ショックの原因として財務諸表の数字に偏重した金融資本主義(Financial Capitalism)が批判されたこと。投資家からは、中長期の投資判断の材料として、非財務諸表、特に人材の指標を設定して開示すべきだという圧力が高まりました。金融資本主義(Financial Capitalism)から人財資本主義(Human Capitalism)へという方向性です

もう一つの流れは2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資です。これら二つの流れの中で、18年にISO(国際標準化機構)も人的資本レポーティングに関する指標のガイドライン(ISO 30414)を出版、さらに20年11月には米SEC(証券取引委員会)が人的資本レポートの開示を義務化しました

エンプロイーエンゲージメントの考え方

異なる者の結びつき度合いがエンゲージメント

エンプロイ

従業員満足度との違い

エンプロイ

商品市場・資本市場・労働市場で選ばれる会社をつくるためには「人的資本経営(=エンゲージメントを軸とした経営)」に取組む必要がある

ISO 30414:国際規格(労働市場のKPI:重要業績評価指標)

エンプロイ

 

エンプロイーエンゲージメントを高めるメリット

人材の定着

従業員エンゲージメントの向上は従業員の帰属意識を高め、人材定着率の向上や優秀な人材の流出を抑える効果が期待できます。従業員エンゲージメントが高い従業員は仕事のやりがいや自社への愛着があるため、自社に定着しやすくなると考えられるからです。従業員の定着率が上がれば、人材不足による無理な採用が不要になり、採用活動においては自社に必要な人材をじっくりと見極められるようになります。

労働生産性の向上

アメリカを拠点とする世論調査・人材コンサルティング企業「ギャラップ社」の調査「State of the Global Workplace」によると、従業員エンゲージメントが高い集団は、従業員エンゲージメントが低い集団よりも、生産性は17%、収益性は21%高いといいます。従業員エンゲージメントが高まると企業に対する従業員の貢献意欲も高まるため、従業員一人ひとりが意欲的に仕事に取り組むことで労働生産性の向上に効果があると考えられています。

エンプロイーエンゲージメントを高めるとなぜ業績が向上するのか

ダニエル・キム(MIT教授)の「組織の成功循環モデル」

明るく働きがいがある職場

    🔶バットサイクル🔶                  🔶グッドサイクル🔶
1.成果があがらない(結果の質)         1.お互いに尊重し、一緒に考える(関係の質)
2.対立・押しつけ・命令する(関係の質)       2.気づきがある、面白い(思考の質)
3.面白くない、受身で聞くだけ(思考の質)      3.自分で考え、自発的に行動する(行動の質)
4.自発的・積極的に行動しない(行動の質)      4.成果が得られる(結果の質)
5.さらに成果が上がらない(結果の質)        5.信頼関係が高まる(関係の質)

職場の人間関係をよくすると、関係の質が良くなり、思考の質が高まり、行動の質が良くなります。結果として、結果の質が良くなるとの理論です。エンプロイーエンゲージメントを高めると、人間関係の質が良くなるため、関係の質が良くなり➡思考の質がよくなり➡行動の質が良くなり➡結果として業績が良くなるということです。

チームワークの向上

会社への信頼感だけでなく、ともに働く同僚への信頼感も高まると、従業員同士のコミュニケーションや助け合いが活発になり、社内のチームワークを向上させる効果が期待できます。チームワークの向上は社内の雰囲気や風通しをよくし、従業員のモチベーションアップや離職率の低下につながります。

中小企業においてエンプロイーエンゲージメントを高める方法

相互理解
~経営者と社員との考えをガラス張りにする~

自己理解➡他者理解➡他者を受け止める(相互理解)

①経営者自身が自己理解を深める。
「自分はこの会社を経営することでどのようなことを実現したと思っているのか」
「自分はどのような経営者でありたいと思っているのか」
「自分は理想を実現するために最善の努力をしているだろうか」
上記3つを自省を込めて考えて見てください。
②社員からどのように見られているかで自己理解を深める
・社員との日々のコミュニケーションの中で、言われてカチンときたことやショックを受けたことを一つ一つ書き留めておく
・メモをした一つ一つの社員の言葉を、発信した社員の視点から改めて掘り下げてみる
③傾聴面談で社員の思いや価値観を理解する。
・過去に社員がモチベーションが高かった時や低かった時のことを聴取しなぜ低かったのかを知ることによって、社員の価値観や仕事への思いを共有することができます。その時には、まず経営者自身が自己開示することが必要です。

動機形成
~理念・ビジョンの共有~

①社員と共有できる経営理念を創る。
例えばオリエンタルランドの経営理念は
自由でみずみずしい発想を原動力に すばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供します。」
埼玉県経営品質賞「知事賞」を受賞した株式会社タカヤマ(所沢市 廃棄物処理及びリサイクル業)の社長の経営信条「 凡事徹底・凡事慣徹!! 平凡なことをやり続けるならば、必ず非凡な会社となりうる」
身近で共感できる会社の経営理念、経営信条を参考にするといいです。その時に新しい気づきがあります。

②ビジョンは3年から5年後の会社のあるべき姿です。以下の点に注意して創る。
・誰に
・どんな課題に
・何を持って(何を大切に行動するのか)
・どんな行動で
・どう役立つか

協働意識
~チームで支え合い、より善い目的に向けて働く職場~

ピラミッド型組織からサークル型組織への移行
エンプロイマネージメント

切磋琢磨
~学び続ける人材・風土作り~

①人が育つ現場を作り上げるため、下記のことを実施してみてください。
・任される(任せる)
・やり遂げる(応援する)
・振り返る(内省させる)
②社員の提案を吸い上げる仕組みを創る。
③社員の成長を促進する研修を実施する
・現場の社員が講師を務める研修・勉強会。
・ケーススタディー形式の研修。

適切な評価制度
~職務と成果に応じて粗利を公平に分け合う~

①給与の原資をオープンにする。(決算書を公表する)
・労働分配率を決める
②職務と給与テーブルを連動させガラス張りにする。

エンプロイーエンゲージメントのモノサシとしての経営労務監査

事業活動にはP/Lというモノサシがありますが、エンプロイエンゲージメントにはモノサシがありません。経営労務監査がエンプロイエンゲージメントのモノサシとなることができます。

経営労務監査とは

経営労務監査の目的

経営労務監査の目的は「労務監査」を「企業の組織労働の運営という人的側面から評価するために、経営の内部統制システムの監査機能として組み込むことで、法令遵守と人材マネージメントのセルフチェック機能として活用し、適切な企業成長を支えるツール」として考えています。
会計検査が公正妥当な会計原則に基づく厳正な資本運用の視点で会社経営を監査するのに対して、労務監査は会社の人材(労働)活用の労務管理施策(人材マネジメント)や労働編成(人材配置)について適法で適切であるかの視点で監査します。常に経営(事業運営)と労務を不可分の視点で把握するために、「経営」を冠して「経営労務監査」と称しています。

経営労務監査の全体像

会計監査は資本運用の視点に対し経営労務監査は内部統制システムと

人材活用の労務管理施策に関しての監査を実施します。

経営労務監査

労務監査の体系図

労務監査の体系図

インフラとしての労務コンプライアンス監査

労務コンプライアンス監査の主な目的は、諸規程に関する法令遵守状況や実務の実態を監査するものです。労働法令を遵守することは人材をマネージメントをする際の最低限守らなければならないものであり、インフラである労働環境及び業務執行体制を監査するものです。具体的には下記事項です。
・組織図(組織規程)

・人員表(組織対応の人材構成)
・職務分掌規程
・職務権限規程
・職務記述書
・就業規則(賃金等付属規程を含む)
・賃金台帳(源泉徴収簿)
・労働者名簿
・労使協定
・労働協約
その他(必要に応じて除外、追加)

労務コンプライアンス監査と労務DD・労務監査との違い

労務コンプライアンス監査は業務の執行体制やそれに伴う諸規程の整備状況を主眼したものですが、労務DD・労務監査の主眼は労務リスク(金銭評価できるもの、金銭評価できないもの)を主眼にしたものです。

労務DD・労務監査の範囲

(1)金銭評価できる労務リスク(労働債務)の見積もり
①法違反によるもの
・未払い割増賃金
・解雇予告手当、休業手当、休業補償等
・代休未消化残
・未払い労働保険料、社会保険料
・その他の法違反により発生した労働債務
②雇用契約上の理由(労働慣行)を含むによるもの
・未計上の退職給付債務
・労働協約、就業規則、労働契約に違反する賃金、手当、福利厚生施策等
・その他の民事的な労働債務
(2)金銭評価できない労務リスクの把握
①法違反によるもの
・就業規則、賃金台帳等未整備
・36協定違反
・セクハラ・パワハラ
・その他労働関連法違反
②民事的なトラブル
・解雇、雇い止めをめぐるトラブル
・パワハラ
・その他民事的なトラブル
(3)人事労務マネジメントの課題の確認
・経営統合後(M&A後)必要となる人事労務マネジメント上の課題

 

人材ポートフォリオ監査

人材ポートフォリオ監査の主な目的は、人材を適切に配置しモチベーションを高め、経営計画に沿った合理的なものとなっているかを判断するものです。具体的には下記のようなテンプレートを使って情報収集をします。なお、人材ポートフォリオ監査の中に従業員意識調査は含まれます。

経営労務監査

人材ポートフォリオ分析

・組織の機能・役割、組織ごとの人員構成(役職者、非正規従業員、非雇用人材、男女別)、人件費を明らかにする。これは、検討の基礎になる情報であり、言い方を変えれば、どのような人員構成・コストで、どのような機能を果たしているかの確認資料でもあります。これだけで経営改善の必要性が確認できる場合もあります
・とるべき経営戦略と実際の組織形態が合致しているかどうかを確認する。

 

 

人材ポートフォリオ

従業員意識調査

会社経営の業績数値がどんなに優れたものであっても、そこで働く人々の職務遂行への納得感や職場環境に対する満足度が低いものであれば、高い業績を維持し持続的な会社の成長を望むことはできません。そこで「経営姿勢、職場環境、人間関係、労働条件、将来ビジョン」等について従業員へのアンケート方式での意識調査を行い、制度や数値の背後にある従業員の主観的な雇用満足度を具体的に確認し、前述のふたつの監査手法から導き出される企業への提言にします。

先ずは社労士診断認証制度を利用しましょう

先ずは試しに社労士診断認証制度を利用してください。無料でできます。そこで自社の問題点を洗い出し、上記エンプロイエンゲージメントを高める方法を試してください。1年実行しまた社労士認証制度を利用してください。改善出来ている項目を少しづつ増やしていけば職場改善は進んでいます。
社労士認証制度については以下を参照してください。
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まとめ

関係性の質を重視する

問題が起きた時に解決策を提示することは簡単です。ただし、そのようなことを繰り返していくと、問題が起きるたびに自身で解決することができない組織となってしまいます。そのような組織は成長することはなく、将来発展する可能性はあまりありません。
組織を成長させたいなら、問題が起きた時に組織内で自由に話し合い、問題解決のためにチームが協力し合う組織風土を作ることが必要です。そのためには、「結果の質」にこだわってはいけません。
問題解決のためには話し合った結果の「改善策の質」にこだわるのではなく、話し合いを実施して導いたプロセスが「関係性の質」を重視して話し合った改善策であるかを重視するべきです

なぜ関係性を重視したいのか

私は、破綻した都市銀行に勤務していました。破綻した原因はマスコミや新聞、または、頭取が本にして出版していますのであまり偉そうなことは言うことはできませんが、私の考えを述べさせていただきます。

バブル期の銀行のイメージは「堅い商売」とのイメージでした。それは融資やお金の管理に対して慎重に対応してきたからです。ことに融資に関する規程はたくさんあり、この規程を守っていれば銀行経営が傾くことはないと思えるほど行内牽制体制がしっかり出来上がっていました。

ところが、バブルの波に乗って勤務していた銀行はインキュベーション戦略を社内外に宣伝していました。そしてインキュベーション銘柄の企業に対する融資については営業主導で行い審査部のチャックがなくても、融資ができる体制を作ってしまったのです。長年築き上げてきた組織の執行体制を変えてしまいました。その結果、湯水のごとく特定の企業に融資をおこない、バブルがはじけて不良債権の山となったのでした。その後のことは周知のとおりです。

破綻した原因は組織の暴走だと私は思っています。組織が間違って方向に進んで誰も止めることができなかったのです。当時、自分は若かったので、このような状況になったのはおかしいし、役員が責任を取るべきだと思っていましたが、行内からその声はあがりませんでした。なお、破綻した後にその声はいろいろなところから聞こえてきました。

自分が正しいと言うつもりはありません。私が当時思っていたことが、行内から、また、支店長クラスから出てこない組織が問題だとおもいます。おそらく、当時権力を握っていた人がそのような声がでないようにしていたのでしょう。

組織内の関係性が悪いと、組織が暴走した時に正しい方向性へ修正することができなくなるのです。人は、その人の集まる組織は間違えるのです。その時に関係性が悪い組織は修正する意見が出てこないのです。

破綻した銀行は執行体制を間違えました。そのことが問題なのではなく、そのことに対する批判が行内から出なかったことが問題です。プロジェクトを執行する時に、社内から正論も出て、その正論が採用されなかったとしてもその組織は健全と言えます。健全でない組織は、執行体制の改善策、反対意見を押し潰す組織です。

いろいろな意見がでる組織は関係性が良い組織です。是非とも意見の質ではなく関係性の質を重視した結果、出てきた意見を重視してください。

エンプロイーエンゲージメントの理論的な根拠

従業員のモチベーションが上がると生産性が上がるとの理論は下記のとおりです。

マズローの5段階欲求説

モチベーションは段階的に理論の根底にあるマズローの考えは、「人間は自己実現のために絶えず成長する生き物だ」というものです。人の欲求は、自己実現を達成するまでに段階的に満たされていくものとして、次の5段階で構成されると考えられました。
モチベーション理論

ハーズバーグの二要因理論→ 実証に基づく動機づけ

ハーズバーグは「仕事上どんなことによって幸福と感じ、また満足に感じたか」ということと、「どんなことによって不幸や不満を感じたか」という2点について、被験者に対して、質問を行う実験を行いました。この結果、モチベーションを決定づけるのは、次の2つの要因であると主張しました。
① 仕事の内容からもたらさられる満足感
② 仕事の環境からもたらされる不満
モチベーションに関わる要因の一つは、満足に関わる「動機づけ要因」と呼ばれる、仕事内容に関わるものです。具体的には「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」など。これらが満たされることによって満足感を覚えやすいことが明らかになりました。それと同時に結論付けられたのが、これらが欠けていても職務上の不満足を引き起こすわけではないということです。そして、不満をもたらす要因とされるのが「衛生要因」と呼ばれる、職場環境に関わる要因でした。「衛生要因」は、職務環境における基本的な内容がほとんどで、それらが不足していると不満に結びついてしまうものの、必要以上に充実させたところでモチベーションがさらに向上するものではないとされます。

マクレガーのX理論・Y理論→ 人間の本質で考える

マクレガ-は人間の本性を「仕事嫌いで怠け者なX部分」と、「自己実現をしたいというY部分」に分けて捉え、それぞれに対する管理者の行動様式を「X理論・Y理論」として提唱しました。「X理論・Y理論」は、人の心を分析することに留まっていたマズローの思想をさらに深化させ、それに対する管理者の行動を明示するという、企業運営により重要な観点を盛り込んでいます。X理論ネガティブ面を表す《X》の要素が強い人材は、「人間がもともと持つ怠け者の部分が顕著であり、野心や責任感が見られず、強制されたり命令されたりしなければ仕事をしない」とされました。Xの要素が強い人材に対しては、その人材の業務範囲を明確に定め、懲罰をもって脅かすか、賃金アップを約束するといった「アメとムチ」によってモチベーションをコントロールする、言ってみれば独裁的なマネジメントが求められると、マクレガーは提唱しています。
Y理論ポジティブな面を表す《Y》の要素が強い人材は、自己実現を目指そうとする気質があるとされました。「欲求5段階説」でいう承認欲求と自己実現欲求で構成される「高次な欲求」が強い場合に表れる人の側面です。Yの要素が強い人材は、どこまで自分でコントロール可能かという条件次第で仕事に対するモチベーションが左右されるため、管理者は従業員との間で協力関係を構築することと、各従業員の望むものの目標が企業の目標と一致するよう努力することが重要だと提唱しました。

期待理論→ 期待を高めれば、実績も上がる

ロビンスの「期待理論」の根底には、「人の行動は、その行動が定められた報酬につながるという期待と、達成される成果が本人にとってどれだけ魅力があるかによって決定される」という考えがあります。そして、行動に対するモチベーションは、3つの変数の掛け算によって左右されます。理論は数理的な複雑なものであるため、あえて単純化して説明すると、その変数は以下となります。
「努力」×「成果」×「魅力」
「努力」とは、その業務にどの程度努力すれば成果に結びつくかということで、途方もない努力が必要だとわかると、行動に対するモチベーションは上がりにくいものになります。もちろん、あまりに努力の必要性がないルーチン的な作業であっても、意欲は出にくいことが想像されます。次の変数「成果」は、どの程度のレベルの仕事をすれば、望む成果が得られるかということで、言い換えれば、最終的に得られる報酬に結びつく可能性がどれだけあるかということです。たとえ、努力を傾けたとしても達成しようとする業務が、目指すべき目標と異なる場合、モチベーションが上がることはありません。
最後の「魅力」は、得られる報酬に対する魅力を表す変数です。努力を傾け、成果を上げることができるとしても、報酬に魅力を感じることがなければ、前向きに行動を起こすことは想定されにくくなります。

目標設定理論→ 目標がやる気を決める

「目標設定理論」では、単に目標を設定するだけではモチベーションへの効果はなく、自己効力感をいかに高めるかという視点から、目標設定に必要な4つの要件が定義されました。それが、「目標の困難度」「目標の具体性」「目標の受容」「フィードバック」です。「目標の困難度」は、困難であるものの達成可能な目標がより自己効力感を発揮させやすいことに基づく要件です。難しすぎず、簡単すぎない、なんとか達成できるような困難度の目標が、努力を継続させ、伴って業績を生み出しやすいと考えられています。そして目標は、それが達成できるかどうか、また自身の進捗や成果を実感できるよう、数値や期間などで具体的に示される必要があります。これが「目標の具体性」です。さらに定められた目標は、一方的に指示されるものではなく、自らがその目標設定に関わり、コミットメントしたものでなければ、自己効力感は生まれにくいものとされます。自ら率先して目標に関わる要件を「目標の受容」と言います。最後に重要な要件が「フィードバック」で、目標に対する達成度やそれに応じた成果水準を適切にフィードバックすることで、目標に対するモチベーションが継続的に維持されていきます

マクレランドの欲求理論→ リーダーシップの影響を研究

マクレランドが「欲求理論」で提唱した行動の原動力となる4つの欲求は、「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」「回避欲求」です。達成欲求成功によって得られる報酬よりも、何かを成し遂げることによる達成感や、より成果を残したいという向上心を求める欲求を指します。
・権力欲求
部下や同僚など、他者に影響力を及ぼし、コントロールしたいという欲求を言います。こうした欲求が強い人材タイプは、責任を伴う仕事を好み、激しい競争を受け入れ、地位や身分が重視される状況を求める人材です。
・親和欲求
周囲の人材と友好的な関係を構築したいと願う欲求です。この傾向が強いタイプは、他者から好かれたい、信頼を得たいという願望があり、人のために役立とうと努力する特性があります。
・回避欲求
これは失敗や困難な業務から逃げようとする気持ちの事で、こうした感情が強い人材は、成果としてあるべき目標を避けて通ったり、率先して行動するよりは、周囲に合わせる傾向が見られます。これらの人材は、チームの一員としては足を引っ張りかねない存在ではありますが、将来的にそうした部分を克服させることを目指して、不安要素を洗い出し、周囲から十分なサポートを行う必要があります。

テイラーの科学的管理法→ 業務を「見える化」

テイラーは、作業を目に見える形にし、科学的に作業の進捗や成果を管理することで、こうした取り組みを通して、作業員のやる気が刺激され、業務効率が向上することを示しました。各作業員が実施すべき作業内容を明確に定め、管理することが科学的管理法のベースとなります。タスクを明確にするため、テイラーはまず工場内の作業を細かく分解しました。そして、それぞれにかかる時間をストップウォッチで計測する「時間研究」と、多数いる熟練の人材の動きを観察し、効率的に作業を進めるための「動作研究」を実施します。一つ一つの作業内容や手順をマニュアルにし標準化、全工程を「見える化」することが、テイラー・システムとも呼ばれる科学的管理法です。その他にも、出来高によって人材ごとに報酬を変える「差別出来高給」や、それまで管理者が企画から管理、執行までを一元的に行っていた体制を、職種ごとに領域を明確にし、それぞれの責任者を設ける「職能別組織」なども、科学的管理法の特徴です。「見える化」「標準化」「マニュアル化」など、いまでも耳にするこうした用語からわかるように、テイラーが進めた科学的管理法は、現代の業務管理の基礎を築いた研究です。

メイヨーのホーソン実験→ 「人間関係」でやる気向上

メイヨーは、数値のみで人のモチベーションを管理することが当たり前になっていた製造現場に必要なことは、業務効率ではなく人間関係による動機づけだと主張しました。メイヨーが行った実験の1つは、「リレー組立実験」です。作業員の賃金や休憩時間、室内温度など、様々な条件を変えながら、2つの6名の作業グループに組立作業を行わせ、それぞれの能率に変化があるかを確かめるものでした。実験開始当初、これらインセンティブを変化させることによって、作業効率も伴って変化するとの仮説が立てられましたが、なぜかどのように条件を変えても、生産高が右肩上がりになるという現象が起きます。分析を通して見出されたのが、能率の向上が、環境要因の変動によるものではなく、実験が選ばれた少人数にのみに行われたことで、彼らに注がれた関心の目や、実験への参加意識の芽生え、また彼らのグループ内の連帯感の醸成が変化をもたらしているということでした。さらにメイヨーは作業員に対して「面接実験」を行います。面接では、作業員からは業務に対する多くの意見や不満などが発され、しかもそれらは根拠のない思い込みや勘違いなどが多く、これらを意見として述べる機会そのこと自体が、彼らの満足度を高めることも明らかになりました。ホーソン実験を通してメイヨーが導き出した結論は、生産性を決定するのは、数値による管理でも、厳格な管理体制でもなく、職場にいる作業員同士で自然に作り上げられる仲間意識だということです。

アージリスの未成熟-成熟理論→ 仕事での自己実現

アージリスは、最初は未成熟な人材が次第に成熟していくにつれて起きる人間的な変化を「未成熟-成熟理論」としてまとめ、企業組織における人材管理に多大な影響をもたらしました。アージリスがまず手掛けたのが、組織において人が未成熟の状態から、成熟した状態へと成長することによって、人格にどのような変化が生じるのかというパーソナリティ分析でした。アージリスの集大成的な理論によれば、組織においては、人間の心には7つの次元で変化が起きると考えられています。
• 受動的な人格から→ 能動的な人格への変化
• 依存的な人格から→ 独立的な人格への変化
• 単純な行動から→ 多様な行動への変化
• 浅い興味から→ 深い興味への変化
• 短期的な展望から→ 長期的な展望への変化
• 従属的な立場から→ 対等・優越的な立場への変化
• 自己認識が欠如から→ 自覚と自己統制する状態への変化
人材を自己実現する生き物と捉えたアージリスは、企業組織において人材のモチベーションを高めるためには、一人一人がもつ職務や責任、権限を拡大し、各個人がより心理的に成功体験を得やすい環境やマネジメントを行う必要があると提唱しました。

コンピテンシー理論→ 過去の評価から未来の評価へ

圧倒的能力を指す「コンピタンス」という言葉は、元々は「環境と効果的に相互作用を発揮する能力」という意味合いで、1959年、心理学者ロバート・ホワイトによってもたらされました。置かれた状況や環境で適性を発揮するための能力を示す「コンピタンス」は、モチベーション理論にも応用され、現代における代表モデル、「コンピテンシー理論」として知られるようになりました。「○○ができる」で表現される能力を意味する「コンピタンス」という概念に着目したマクレランドは、能力ではなく、「○○している」という個人の特性を示す「コンピテンシー」の概念を取り入れます。「コンピテンシー」は、厳密には「職務や環境において、効果的もしくは優れた行動に結びつく個人特性」と定義されます。マクレランドが、「コンピテンシー」に着目した理由として想定できるのは、それまでの多くの人事評価制度は、「能力=できること」という結果部分に焦点を当てることが通例であったということです。一方、「特性=していること」に焦点をあてる「コンピテンシー理論」は、日常的な行動を評価することから、将来的な成果へと結びつきやすいものと考えられています。行動は、先天的にもつ特性と、後天的に得られる知識やスキルによって作り出されるもので、コンピテンシー理論をわかりやすく言えば、「どう行動すれば、より実績が得られるか」のポイントを示したものだと言います。そしてコンピテンシー理論の最大の特徴は、決まった特性を明示するものではないという点です。

 

 

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