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副業・兼業について企業が知っておくべきこと

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資金調達コンサルタント/社会保険労務士 大学卒業後、中小企業支援の志を持って北海道拓殖銀行に入行。融資業務を担当して経営を学ぶ必要性を感じ、行内選抜を経て、日本生産性本部主催、経営コンサルタント養成基礎講座に出向。認定経営コンサルタント資格取得をして銀行に戻るも、経営破綻。中央信託銀行に就職したが、中小企業支援への想いは忘れられず、悶々とした日を過ごす。 その間、社会保険労務士、行政書士、FP1級、宅建士を取得し、独立を意識する。 55歳を機に三井住友信託銀行を退職し、札幌商工会議所の経営指導員を経て独立。 若き入行時の志を現在実行中。

副業・兼業規定

 

 

 

 

副業・兼業への関心の高まり

 

労働政策研究・研修機構の調査報告(多様な人材の働き方の進展と人材マネージメントの在り方に関する調査」調査シリーズNo.184(2018年11月))で労働者調査の結果をみても、今後5年先を見据えた副業意向について、「新しくはじめたい」(23.2%)、「機会・時間を増やしたい」(13.8%)があわせて4割弱にのぼっています。

同報告(企業調査)では、副業を許可してる企業(11.2%)や許可を検討している企業(8.4%)もあわせて2割弱となっています。

副業・兼業に介入できる時は

 

勤務時間外の副業については原則として個人の自由であり、そもそも企業の許可が必要ではないということです。

企業が個人の副業を禁止できるのは、基本的には厚生労働省の「モデル就業規則」の第68条2項に列挙されているような次の場合に限られます。

(モデル就業規則)

第68条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

副業・兼業のを認める時の環境整備

 

労働基準法第38条第1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されており、また、「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含むとされています。

労働者が行う副業・兼業の形態によっては、企業は労働者の副業・兼業先の労働時間も通算して管理する必要が生じますので、副業・兼業の内容を事前に労使双方でしっかり確認することが重要ですので、副業・兼業を行う時には事前に会社に届け出るような仕組みが必要です。

なお、労働時間通算の対象とならない場合においても、過労等により業務に支障を来さないよう、対象者からの申告等により就業時間を把握すること等を通じて、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましいです。

 

副業・兼業を認める時の企業の対応

 

労働契約法第3条第4項において、「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。」とされています。(信義誠実の原則)。

信義誠実の原則に基づき、使用者及び労働者は、労働契約上の主たる義務(使用者の賃金支払義務、労働者の労務提供義務)のほかに、多様な付随義務を負っています。

副業・兼業の場合には、長時間労働となりやすいため、企業は特に安全配慮義務に注意する必要があります。

労働契約法第5条において、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とされており(安全配慮義務)、副業・兼業の場合には、副業・兼業を行う労働者を使用する全ての使用者が安全配慮義務を負っています。副業・兼業に関して問題となり得る場合としては、使用者が、労働者の全体としての業務量・時間が過重であることを把握しながら、何らの配慮をしないまま、労働者の健康に支障が生ずるに至った場合等が考えられます。このため、

・ 就業規則、労働契約等において、長時間労働等によって労務提供上の支障がある場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと

・ 副業・兼業の届出等の際に、副業・兼業の内容について労働者の安全や健康に支障をもたらさないか確認するとともに、副業・兼業の状況の報告等について労働者と話し合っておくこと

・ 副業・兼業の開始後に、副業・兼業の状況について労働者からの報告等により把握し、労働者の健康状態に問題が認められた場合には適切な措置を講ずること等が考えられます。

 

労働時間管理

 

所定外労働時間の通算(原則的な労働時間の管理方法)

 

①副業・兼業の開始後は、自社の所定外労働時間と副業・兼業先における所定外労働時間とを当該所定外労働が行われる順に通算します。 

所定労働時間の通算は、労働契約締結の先後の順となっており所定労働時間所定外労働時間通算の順序に関する考え方が異なる点に注意してください。

②自社と副業・兼業先のいずれかで所定外労働が発生しない場合の取扱いは、以下のとおりです。

・ 自社で所定外労働がない場合は、所定外労働時間の通算は不要

・ 自社で所定外労働があるが、副業・兼業先で所定外労働がない場合は、自社の所定外労働時間のみ通算する

③ 通算した結果、自社の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、その超えた部分が時間外労働となり、そのうち自ら労働させた時間について、自社の36協定の延長時間の範囲内とする必要があるとともに、割増賃金を支払う必要があります。

副業・兼業規程

 

出典:副業・兼業の促進に関するガイドライン

管理モデルの実施(簡便な労働時間管理の方法)

 

管理モデルとは

副業・兼業の日数が多い場合や、自社と副業・兼業先の双方で所定外労働がある場合などにおいては、労働時間の申告等や労働時間の通算管理において、労使双方の手続上の負荷が高くなることが考えられます。管理モデルは、そのような場合において、労使双方の手続上の負荷を軽くしながら、労働基準法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる方法で、具体的な方法は以下のとおりです。

① 副業・兼業の開始前に、

(A)当該副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者(以下「使用者A」といいます。)の事業場における法定外労働時間

(B)時間的に後から労働契約を締結した使用者(以下「使用者B」といいます。)の事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)

を合計した時間数が時間外労働の上限規制である単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定する。

② 副業・兼業の開始後は、各々の使用者が①で設定した労働時間の上限の範囲内で労働させる。

③ 使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場におけ36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払う。

管理モデルと使用するれば、設定した労働時間の上限の範囲内において労働させます。

使用者Aはその法定外労働時間※について、使用者Bはその労働時間について、それぞれ割増賃金を支払います。

※ 使用者Aが、法定外労働時間に加え、所定外労働時間についても割増賃金を支払うこととしている場合には、使用者Aは所定外労働時間の労働について割増賃金を支払うことになります。

 

 

健康管理

 

使用者は、労使の話し合いなどを通じて、以下のような健康確保措置を実施することが重要です。

・ 労働者に対して、健康保持のため自己管理を行うよう指示する

・ 労働者に対して、心身の不調があれば都度相談を受けることを伝える

・ 副業・兼業の状況も踏まえ必要に応じ法律を超える健康確保措置※を実施する

・ 自社での労務と副業・兼業先での労務との兼ね合いの中で、時間外・休日労働の免除や抑制を行う

※使用者は、労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、労働安全衛生法第66条等に基づき、健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックやこれらの結果に基づく事後措置等(以下「健康確保措置」という。)を実施しなければならない。

使用者は、上記の健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者や、ストレスチェックの結果高ストレスと判定され医師による面接指導を受けた労働者については、労働安全衛生法第66条の4、第66条の5及び第66条の10に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について医師等の意見を聴取し、必要があると認めるときは当該労働者の実情を考慮して、

① 就業場所の変更

② 作業の転換

③ 労働時間の短縮

④ 深夜業の回数の減少等の適切な措置を講じなければなりません。

健康確保措置の実施対象者の選定に当たって、副業・兼業先における労働時間の通算をすることとはされていません

ただし、使用者の指示により当該副業・兼業を開始した場合は、当該使用者は、原則として、副業・兼業先の使用者との情報交換により、それが難しい場合は、労働者からの申告により把握し、自らの事業場における労働時間と通算した労働時間に基づき、健康確保措置を実施することが適当でしょう。

 

副業・兼業に関わる諸制度について

 

副業・兼業による労災給付水準や雇用保険・社会保険の適用について法改正がありました。

労災保険の給付

 

非災害発生事業場の賃金額も合算して労災保険給付を算定することとしたほか、複数就業者の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行うこととなりました。

なお、労働者が、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合、一の就業先から他の就業先への移動時に起こった災害については、通勤災害として労災保険給付の対象となります。

 

副業・兼業労災給付

出典:厚生労働省

雇用保険・社会保険の扱いについて

 

雇用保険の扱いについて

 

複数の事業主に雇用されている者が、それぞれの雇用関係において被保険者要件を満たす場合、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者となるが、「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14号)により、令和4年1月より65歳以上の労働者本人の申出を起点として、一の雇用関係では被保険者要件を満たさない場合であっても、二の事業所の労働時間を合算して雇用保険を適用するマルチジョブホルダー制度が試行的に開始されます。

マルチジョブホルダー制度とは65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所で適用要件(※)を満たす場合に、本人の申し出により特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度。複数の事業所に雇用される者に対する適用は従前から検討されてきましたが、失業認定や給付にかかる法技術的な課題のほか、逆選択などのモラルハザードが懸念させることから、失業給付が一時金(高年齢求職給付金)となる65歳以上を対象に試行的に導入し、適用による行動変化を等を踏まえ、その効果等について施工後5年を目途として検証されることとなりました。

 

社会保険の扱いについて

 

社会保険(厚生年金保険及び健康保険)の適用要件は、事業所毎に判断するため、複数の雇用関係に基づき複数の事業所で勤務する者が、いずれの事業所においても適用要件を満たさない場合、労働時間等を合算して適用要件を満たしたとしても、適用されない。また、同時に複数の事業所で就労している者が、それぞれの事業所で被保険者要件を満たす場合、被保険者は、いずれかの事業所の管轄の年金事務所及び医療保険者を選択し、当該選択された年金事務所及び医療保険者において各事業所の報酬月額を合算して、標準報酬月額を算定し、保険料を決定する。その上で、各事業主は、被保険者に支払う報酬の額により按分した保険料を、選択した年金事務所に納付(健康保険の場合は、選択した医療保険者等に納付)することとなります。

 

まとめ

 

副業・兼業を認めると労務管理や雇用保険・社会保険の管理が煩雑になりますが、労働力が減少して行く中で下記のメリットが企業にはあります。

① 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
② 労働者の自律性・自主性を促すことができる。
③ 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
④ 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。

日本の雇用慣行であるメンバーシップ制は長期雇用を前提に労働者のキャリア形成には配慮していなく、身につけるスキルは会社内で通用するスキルです。一方で少子高齢化により、年金給付時期は70歳となる日が確実に到来すると思われます。それに伴い定年も延長されるでしょう。

今、大企業を中心にシニアの活用が問題になっています。なぜならば、個人のキャリア形成をしてこなかったために、定年になってほとんどの人が、処遇を引下げられ、与えられる仕事はモチベーションが上がらないものであるため、「働かないおじさん」といわれています。

定年が延長されるのが確実な状況であるため、副業・兼業を認め、労働者のスキルアップができる機会を与えることによって、シニアになっても活躍できる人材を育てていく必要があると思われます。

定年についても検討してみてはいかがでしょうか。

 

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