2024年 医師の時間外労働等の上限規制が決定!!!
月100時間を超える例外を認める
医師に対する時間外労働の上限規制は、診療の求めがあった場合に正当な理由がなく拒めない応召義務や、地域医療供給体制の確保、医師の技能向上のための集中的な診療等が必要な観点から、働き方改革法関連施行後5年間猶予された上で、一般的な医業に従事する医師の時間外労働の上限水準に加えて4つの特例水準が設定されました。
36協定で定めることができる通常の上限時間は一般則と変わりませんが、臨時的に必要がある場合の上限時間は休日労働を含めて月100時間未満、年960時間としています。
さらに、月の時間外・休日労働が月100時間以上となることが見込まれる者は36協定に面接指導の実施を定めることを要件に、月の上限を超えて年960時間まで時間外・休日労働をさせる例外を認めることになりました。
他方、4つの特例水準では、休日労働を含めて月100時間未満を上限とするが、同様に面接指導等の実施を36協定に定めることを要件に月100時間以上の時間外・休日労働をさせる例外を認め、年の上限時間を1,860時間等とすることになりました。
いずれの水準も一般則とは異なり、複数月平均80時間の上限時間や、臨時的に月45時間を超えることができる年6ヵ月までの規制は適用しません。
36協定で定める医師の時間外・休日労働の上限
A水準 | 特例水準 | |||||
連携B水準 | B水準 | C-1水準 | C-2水準 | |||
通常の上限 | 月45時間・年360時間(休日労働除く) | |||||
臨時的な場合 | 月上限 | 100時間未満(休日労働含む)例外あり | ||||
年上限 | 960時間(休日労働含む) | 1,860時間(休日労働含む) | ||||
面接指導 | 月100時間以上が見込まれる場合に義務(36協定で定める) | |||||
追加健康確保措置 | 努力義務 | 月100時間以上が見込まれる場合に義務 |
追加健康確保措置
具体的には(1)連続勤務時間制限28時間、(2)勤務間インターバル9時間、これが出来ない場合には(3)代償休息を義務付けます。
特例水準が適用される医療機関では、これらの追加的健康確保措置を36協定で定めることが要件となっています。
B水準の対象医療機関の指定要件
【医療機能】
◆「救急医療提供体制及び在宅医療提供体制のうち、特に予見不可能で緊急性の高い医療ニーズに対応するために整備しているもの」・「政策的に医療の確保が必要であるとして都道府県医療計画において計画的な確保を図っている「5疾病・5事業」」双方の観点から、
ⅰ 三次救急医療機関
ⅱ 二次救急医療機関 かつ 「年間救急車受入台数1,000台以上又は年間での夜間・休日・時間外入院件数500件以上」 かつ「医療計画において5疾病5事業の確保のために必要な役割を担うと位置付けられた医療機関」
ⅲ 在宅医療において特に積極的な役割を担う医療機関
ⅳ 公共性と不確実性が強く働くものとして、都道府県知事が地域医療の確保のために必要と認める医療機関
(例)精神科救急に対応する医療機関(特に患者が集中するもの)、小児救急のみを提供する医療機関、へき地において中核的な役割を果たす医療機関
・5疾病
がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患
・5事業
救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療(その他)
◆特に専門的な知識・技術や高度かつ継続的な疾病治療・管理が求められ、代替することが困難な医療を提供する医療機関
(例)高度のがん治療、移植医療等極めて高度な手術・病棟管理、児童精神科等
【長時間労働の必要性】 ※B水準が適用されるのは、医療機関内の全ての医師ではなく、下記の医師に限られる。
◆上記機能を果たすために、やむなく、予定される時間外・休日労働が年960時間を超える医師が存在すること。
連携B水準の対象医療機関の指定要件
【医療機能】
◆医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を確保するために必要な役割を担う医療機関
(例)大学病院、地域医療支援病院等のうち当該役割を担うもの
【長時間労働の必要性】 ※連携B水準が適用されるのは、医療機関内の全ての医師ではなく、下記の医師に限られる。
◆自院において予定される時間外・休日労働は年960時間以内であるが、上記機能を果たすために、やむなく、他の医療機関での勤務と通算での予定される時間外・休日労働が年960時間を超える医師が存在すること。
医師個人の年上限は1,860時間(休日労働含む)
(※連携B水準の指定のみを受けた場合の、個々の医療機関における36協定での時間外・休日労働の上限は年960時間)
C-1水準の対象医療機関の指定要件
日本専門医機構の定める専門研修プログラム/カリキュラムに参加する後期研修医であって、予め作成された研修計画に沿って、一定期間集中的に数多くの診療を行い、様々な症例を経験することが医師としての基礎的な技能や能力の習得に必要不可欠である場合です。
C-2水準の対象医療機関の指定要件
医籍登録後の臨床に従事した期間が6年目以降の者であって、先進的な手術方法など高度な技能を有する意思を育成することが公益上必要とされる分野において、指定された医療機関で、一定期間集中的に当該高度特定技能の育成に関する診療業務を行う場合です。
宿直の扱いについて
以下の2点を満たしていれば、規制の適用除外となります。
この場合、当直中に実際に患者を診るなどの実働があった時間のみ、労働時間として上限規制の対象になります。
1.労働密度がまばらであり、労働時間規制を適用しなくとも必ずしも労働者保護に欠けることのない一定の断続的労働
2.労働基準監督署長の宿日直許可を受けている
一定の断続的労働の基準が緩和されました。
以下の通りです。
●「病棟当直において、少数の要注意患者の状態の変動への対応について、問診等による診察、看護師等他職種に対する指示、確認を行うこと」
●「外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動について、問診等による診察、看護師等他職種に対する指示、確認を行うこと」
※なお、休日・夜間に結果的に入院となるような対応が生じる場合があっても、「昼間と同態様の労働に従事することが稀」であれば、宿日直許可は取り消さないとされています。
各水準と適用を受ける医師について
A水準以外の各水準は、指定を受けた医療機関に所属する全ての医師に適用されるのではなく、指定される事由となった業務やプログラム等に従事する医師にのみ適用される。所属する医師に異なる水準を適用させるためには、医療機関はそれぞれの水準についての指定を受ける必要があります。
追加的健康確保措置の義務及び履行確保の流れ
追加的健康確保措置はB・連携B・C医療機関の対象医師は義務となっています。
面接指導・就業上の措置は月100時間を超える労働する医師について義務となっています。
上記を定めた36協定を結ぶ必要があります。
まとめ
2035年度末を目標に地域医療確保暫定特例水準を解消することとしているが、「医師の働き方改革に関する検討会 報告書」において、地域医療確保暫定特例水準の対象医療機関の実態をなるべくA水準対象医療機関に近づけていきやすくなるよう、「医師の時間外労働短縮目標ライン」を国として設定することとされています。
人口減少により医師の確保が困難を極めるなか、質の高い医療を提供するためには、医師の働き方を改善し勤務環境の整備を行うことが不可欠です。
特例4水準は暫定的なものであり、今後なくす方法で国が考えていますので、勤務環境整備に注力することをお勧めします。