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精皆勤手当の計算には注意!!! 正しい知識で労務トラブルの防止

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精皆勤手当
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資金調達コンサルタント/社会保険労務士 大学卒業後、中小企業支援の志を持って北海道拓殖銀行に入行。融資業務を担当して経営を学ぶ必要性を感じ、行内選抜を経て、日本生産性本部主催、経営コンサルタント養成基礎講座に出向。認定経営コンサルタント資格取得をして銀行に戻るも、経営破綻。中央信託銀行に就職したが、中小企業支援への想いは忘れられず、悶々とした日を過ごす。 その間、社会保険労務士、行政書士、FP1級、宅建士を取得し、独立を意識する。 55歳を機に三井住友信託銀行を退職し、札幌商工会議所の経営指導員を経て独立。 若き入行時の志を現在実行中。

精皆勤手当

 

 

 

精皆勤手当とは

 

精勤手当は法律に基づいて義務付けられておらず、手当の条件は会社の就業規則や賃金規定によって異なります。これは「精勤」という言葉が「仕事に励む」事を意味するので、異なる解釈で捉えることが可能だからです。

皆勤手当や精勤手当とは一般的には「賃金計算対象期間中に、1日も欠かさず出勤した場合にもらえる手当」のことです。これらの手当を出すことで従業員の安定した出勤を促進させる意図があります。

主に、小売業、飲食業、サービス業、また医療や運輸業など従業員(パートタイマーを含む)の一人当たりの役割が大きく、欠勤されてしまうとその日の業務遂行や正常な運営に支障が出てしまうような業種や中小の製造業などで採用されることが多いようです。

 

残業代の計算に含まれるの?

 

残業代の計算から除外できる手当についてですが

1 家族手当
2 通勤手当
3 別居手当
4 子女教育手当
5 住宅手当
6 臨時に支払われた賃金(結婚手当など)
7 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
と労働基準法では決められています。

皆勤手当や精勤手当は月単位で金額が決められているので、実際に手当として支給されるときは、これを「月によって定められた賃金」として残業代の計算の基礎に入れる必要があります。

従業員によっては毎月ではなく、「臨時に支払われた賃金」や「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」のような形での支給になるケースもあるかと思いますがそれはあくまで例外であり原則は、出勤すべき日に出勤した場合に支払われる手当、通常の勤務に関する条件を満たしていれば当然に支給される手当として、基本的には毎月支払われるものとして残業代の計算には入れる必要があります。

 

最低賃金の計算には含まれるの?

 

一方最低賃金を計算する際に賃金から控除する賃金は以下の通りです。

1 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)

2 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

3 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)

4 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)

5 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)

6 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

ここで注意をして頂きたいのは、時間外の割増賃金を算出する時は精皆勤手当は賃金に含めて計算し、最低賃金計算時には含めないということです。

時間外手当計算時の時給が最低賃金を上回っていたとしても、精皆勤手当を含めてなのかを確認しましょう。

 

有給休暇の扱いはどうするの?

 

有給休暇を取得した場合は、精皆勤手当は支給しなくてもいいのでしょうか?

結論から申し上げれば、皆勤手当は支給されなければなりません。労働基準法附則第136条では、「使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。」と定め、「精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利として認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならないものであること。」としています。

 

退職時に有給の消化を申し出た場合

 

結論は支給しなければなりません。そもそも、有給休暇は出勤扱いとしなければならないため、長期の有給休暇を取得したからといいて、皆勤・精勤手当の額を減額するような措置をとることは労働基準法附則第136条違反になるものと考えられます。また、就業規則にも減額の規定があった場合は就業規則の変更を行った方がよろしいかと思います。

 

 

同一賃金同一労働にはどのように対応するの?

 

正社員にだけ支給している精皆勤手当の取扱いはどのようになるのでしょか。

精皆勤の支給の目的を考えていきますと、正社員と契約社員・パート社員の間で、単純に契約社員だから、パートタイマーだから、という理由だけで、手当の支給の有無について差をつけることは難しいのではないかと思われます。

精皆勤手当については法律で義務付けられている手当ではなく、あくまで企業が任意に定めている手当になります。このためその支給方法や基準、金額についても企業が独自に就業規則や賃金規程で内容を定めています。

では「同一労働同一賃金」の元ではどのように扱えばよいでしょうか。

同一労働同一賃金ガイドライン

精皆勤手当
通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の精皆勤手当を支給しなければならない。

(問題とならない例)
A社においては、考課上、欠勤についてマイナス査定を行い、かつ、 そのことを待遇に反映する通常の労働者であるXには、一定の日数以上出勤した場合に精皆勤手当を支給しているが、考課上、欠勤についてマイナス査定を行っていない有期雇用労働者であるYには、マイナス査定を行っていないこととの見合いの範囲内で、精皆勤手当を支給していない。

同一労働同一賃金ガイドラインでは上記のような記載になっています。
ここで疑問に思うのは、欠勤したことについて「全くマイナスの査定をしない」という会社があるのでしょうか。

また下記の判例を参考にするのもよいかとおもいます。

ハマキョウレックス事件 平成30年最高裁判決

○出勤するトラック運転手を一定数確保する必要があることから、皆勤を奨励する趣旨で支給されるものであると解されるところ、上告人の乗務員については、契約社員と正社員の職務の内容は異ならないから、出勤する者を確保することの必要性については、職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない。
○乗務員のうち正社員に対して上記の皆勤手当を支給する一方で、契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものである。

と最高裁は判断をしています。

「精勤手当」「皆勤手当」という手当の本質が、出勤を奨励し、出勤に対する報酬としての手当である以上、同一労働同一賃金の下では「正社員」にのみ支給し、契約社員やパート・アルバイトには支給しないということは難しいようです。

 

まとめ

 

精皆勤手当は労働者のモチベーションを高めるには効果があると思いますが、取扱いは複雑です。就業規則の記載事項と実態との運営が乖離していたり、また、違法な取扱いをしている事例が結構散見されます。

時間労働の割増賃金の計算、最低賃金の計算についも注意が必要です。

就業規則、給与計算を見直してみてはいかがでしょうか。

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資金調達コンサルタント/社会保険労務士 大学卒業後、中小企業支援の志を持って北海道拓殖銀行に入行。融資業務を担当して経営を学ぶ必要性を感じ、行内選抜を経て、日本生産性本部主催、経営コンサルタント養成基礎講座に出向。認定経営コンサルタント資格取得をして銀行に戻るも、経営破綻。中央信託銀行に就職したが、中小企業支援への想いは忘れられず、悶々とした日を過ごす。 その間、社会保険労務士、行政書士、FP1級、宅建士を取得し、独立を意識する。 55歳を機に三井住友信託銀行を退職し、札幌商工会議所の経営指導員を経て独立。 若き入行時の志を現在実行中。

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