中途入社社員の給与計算ってどうするの!!!
日割支給の計算の決まりってあるの
4月から入社される方が多いシーズンです。中途入社される方の給与について、各企業で対応はバラバラです。そこで、中途入社社員に対して、日割計算の対応方法のパターンについて説明します。
法律的な面から説明をしますと、日割、時間割の計算方法については特段法律では定めがありません。よって、各企業毎で就業規則で定めた方法で支給することが必要です。
定めていないと、後で、トラブルになる可能性があります。計算方法は、3通りあります。
①暦日による方法、②当該月の所定労働日による方法、③月平均の所定労働日による方法です。
詳しく説明していきます。
暦日を用いる方法
賃金算定期間の暦日を用いる方法です。計算式は下記の通りです。
計算方法:基本給÷当該月の暦日×当該月暦日日数=支給額
たとえば、月給30万円、賃金締切日を毎月20日、給与支給日を翌月25日、入社が4月1日とした場合の計算方法は下記の通りです。
3月21日から4月20日までの暦日日数は31日
4月の暦日日数を20日。
300,000円÷31日(賃金算定期間暦日日数)×20日(実労働日数)=193,548円(※50銭未満は切り捨て)
※端数処理については、法律で定めがありますが、ここでは便利的に時間外割増賃金の端数処理を便利的に使用しています。
なお、福利厚生的な扶養手当は福利厚生的な給与のため、フルに賃金算定期間働いていなくても支給する場合がありますので、注意が必要です。
当該月の所定労働日数を用いる方法
賃金算定期間の所定労働日数を用いる方法です。計算式は下記の通りです。
計算方法:基本給÷所定労働日数×出勤日数=支給額
月給30万円、賃金締切日を毎月20日、給与支給日を翌月25日、入社が4月1日とした場合の計算方法は下記の通りです。
3月21日から4月20日までの所定日数は20日
4月の労働日数を10日と仮定。
300,000円÷20日(所定労働日数)×10日(実労働日数)=150,000円
ここでも、福利厚生的な手当の支給基準についても注意が必要です。
月平均の所定労働日数を用いる方法
1ヵ月当たりの平均所定労働日数を用いて算出する方法です。
年間所定労働日数÷12=月平均の所定労働日数
基本給÷月平均の所定労働日数×出勤日数=支給額
月給30万円、年間休日が105日、賃金締切日を毎月20日、給与支給日を翌月25日、入社が4月1日とし、4月の労働日数を10日とした場合の計算方法は下記の通りです。
365日-105日=260日(年間所定労働日数)
260日÷12=21.66日(月平均所定労働日数)
300,000÷21,66日(1ヵ月の所定労働日数)×10日(実労働日数)=138,504円(端数切捨て)
賃金規程、就業規則に定めをしましょう
給与を日割で支給する場合は、法律で定めがないことから就業規則、賃金規程で、従業員全員がわかる形にしてルールを明らかにすることが重要です。
手当の日割支給について
福利厚生的な手当について日割り計算をする合理的な理由がない場合は、計算の対象外として満額支給することがよいかと思います。
なぜなら、家族手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当は時間外手当の割増賃金の算定基礎に含まれないので、日割り控除するのはおかしいのではないかという考え方になります。
算定基礎届の対応
算定基礎届の目的は、健康保険および厚生年金保険の被保険者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、7月1日現在で使用している全ての被保険者に4~6月に支払った賃金を、事業主の方から「算定基礎届」によって届出いただき、厚生労働大臣は、この届出内容に基づき、毎年1回標準報酬月額を決定するためです。これを定時決定といいます。
毎年4月〜6月に実際に支給した3か月分の報酬月額の平均額を計算し、標準報酬月額を決定します。その後、報酬が大幅な変動をするようなことがない限り、9月〜翌年の8月までは、この標準報酬月額に基づいて、保険料が適用されます。
なお、年の途中で大幅な変動があった場合には、算定基礎届の提出時期を待たずして、臨時に改定(月額変更届)を行います。
今回は定時決定の手続きについて説明します。
各月の標準報酬月額を計算
4月、5月、6月に支払った報酬(給与・賞与等)を確認する
報酬に含む賃金、含まない賃金を調べる
報酬に含まれる賃金は下記の通りです。
基本給、役職手当、職務手当、勤務地手当、宿直手当、家族手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、残業手当、社宅手当、現物支給のもの等
金銭に限らず、食事を支給していたり、定期券を現物で支給しているような場合でも、報酬として換算して、報酬月額に含まなければなりません。社宅などを提供している場合は、厚生労働大臣が都道府県ごとに定める価額に換算して報酬を算出します。
報酬に含まれない賃金は下記の通りです。
年3回以下の賞与、大入袋、見舞金、退職手当、出張旅費、交際費、慶弔見舞金、傷病手当金、現物支給される作業着や制服等
各月の支払基礎日数を調べる
算定基礎届では支払基礎日数が17日以上と決められています。
ここで、注意したいのが、支払基礎日数=出勤日数ではないということです。正社員などの場合は、通常、月給制になっており、暦日数が支払基礎日数となるためです。欠勤した場合には、就業規則等に基づき欠勤日数を差し引いた日数となります。
一方で、パート・アルバイトなど短時間勤務の従業員の場合は、支払基礎日数=出勤日数となります。有給休暇分も支払基礎日数に含まれますので、注意しましょう。
3か月分の報酬の平均額を計算する
支払基礎日数を確認したら、標準報酬の平均額を計算していきます。
・支払基礎日数が3か月すべて17日以上のとき
4月〜6月の3か月間で支払われた給与の合計額の平均額が標準報酬月額になります。
・支払基礎日数に17日未満の月があるとき
17日未満の月がある場合は、17日未満の月を除いて平均額を算出します。3か月すべて17日未満のとき
・従前の標準報酬月額で定時決定します。
4月に社員が入社した社員で日割で給与を支給した場合。支払基礎日数に注意して算定基礎届を作成しましょう。
なお、パート、アルバイトも4月〜6月の3ヶ月間で17日以上の支払基礎日数がある月の平均で標準報酬月額を算出します。この場合の支払基礎日数は労働日数です。
3カ月とも17日未満の場合は、15〜16日出勤した月を対象とし、3ヵ月とも15日未満の場合は従前の標準報酬月額で定時決定します。
特定適用事業所に努める短時間労働者の場合は、4月〜6月の3カ月の支払基礎日数がそれぞれ11日以上で算出することになります。
まとめ
日割計算での給与支給については法律の定めがありませんので、就業規則、賃金規程に明確に定めておくことをお勧めします。併せて、日割で支給する手当、日割で支給しない手当も定めておくこともよいでしょう。
また、時間外割増賃金、最低賃金、標準報酬日額等、賃金を計算する際に、含める賃金と含めない賃金が違いますので、計算する際は注意が必要ですので、その都度、確認することをお勧めします。
労働時間、労働日数などの就業環境、賃金の支給形態については、労働基準法等で定めていますが、賃金の中身については、法律ではあまり定められていません。
従業員の一番気になるものでありますので、就業規則、賃金規程を見直してみてはいかがですか。