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2022年4月から在職厚生年金額が増える?2022年4月からの年金改正について

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2022年4月から在職厚生年金額が増える
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資金調達コンサルタント/社会保険労務士 大学卒業後、中小企業支援の志を持って北海道拓殖銀行に入行。融資業務を担当して経営を学ぶ必要性を感じ、行内選抜を経て、日本生産性本部主催、経営コンサルタント養成基礎講座に出向。認定経営コンサルタント資格取得をして銀行に戻るも、経営破綻。中央信託銀行に就職したが、中小企業支援への想いは忘れられず、悶々とした日を過ごす。 その間、社会保険労務士、行政書士、FP1級、宅建士を取得し、独立を意識する。 55歳を機に三井住友信託銀行を退職し、札幌商工会議所の経営指導員を経て独立。 若き入行時の志を現在実行中。

2022年4月からの年金改正について

 

 

 

 

老齢厚生年金には2種類ある

昭和60年、年金改正により、老齢厚生年金は、国民年金(老齢基礎年金)の上乗せ給付として65歳から支給されることになりました。しかし、旧厚生年金法では60歳から老齢年金が支給されていたことから、当分の間の経過措置として60歳前半においても老齢年金(特別支給の老齢厚生年金)が支給されることになりました。

よって、老齢厚生年金には、ある一定の生年月日の方が65歳前にもらえる「特別支給の老齢厚生年金」と65歳から支給される本来の「老齢厚生年金」とがあります。「特別支給の老齢厚生年金」と「本来の老齢厚生年金」は全く別物の年金となっています

特別支給の老齢厚生年金

60歳前半の老齢年金(特別支給の老齢厚生年金)は65歳から受給する本来の老齢年金の経過措置であるため、生年月日によって支給開始年齢や受給できる年金が違います。下記の図がスケジュールです。
特別支給の老齢厚生年金
引用:日本年金機構

年金制度は創設してから社会情勢の変化に合わせてかなり改正していますので、

かなり複雑なものとなっています。

また、坑内員・船員、障害者・長期加入者の特例がありますが、

ここで仕組を説明すると、紙面がいくらあっても足りません。

よって、簡略して説明させて頂きますと、以下の要件を満たした方が支給対象です。

・男性の場合、1961年(昭和36年)4月1日以前に生まれたこと。(※)

・女性の場合、1966年(昭和41年)4月1日以前に生まれたこと。(※)

・老齢基礎年金(国民年金)の受給資格期間(10年)があること。

・厚生年金保険等に1年以上加入していたこと。

・60歳以上であること。

※ただし、共済年金の場合は男女による生年月日の区別はなく、受給資格者は上記男性の生年月日によって引き上げられます。

65歳から受給する老齢厚生年金

老齢厚生年金は本来は65歳から受給できます。受給資格は以下のとおりです。

・老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること。

・厚生年金保険等に1ヵ月以上加入していたこと。

現行の老齢厚生年金の減額の計算方法

老齢厚生年金は上記記載の通り2種類ありますので、それぞれ計算方法があります。

理解しやすくするため、考え方を説明させて頂きます。

月の年金受給額+月給の金額がいくらかで判断します。

月の年金受給額とは

月の年金受給額とは基本月額といいます。

分かりやすく説明すると以下のとおりです。

加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金の月額。つまり、年額の年金額÷12ヵ月

月給とは

ここでいう月給とは総報酬月額相当額といいます。

・総報酬月額相当額
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12

標準報酬月額、標準賞与額については上記リンクを参照してください。

特別支給の老齢厚生年金(60歳~65歳)の減額の計算方法

月の年金受給額+月給が28万円以上になると年金が減額されます。

以下計算式です。

・基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合
全額支給

・総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円以下の場合 【計算方法1】
基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2

・総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円超の場合 【計算方法2】
基本月額-総報酬月額相当額÷2

・総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円以下の場合 【計算方法3】
基本月額-{(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

・総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円超の場合 【計算方法4】
基本月額-{47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

引用:日本年金機構

65歳からの老齢厚生年金の減額の計算方法

月の年金受給額+月給が47万円以上になると年金が減額されます。

以下計算式です。

・基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合
全額支給

・基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

引用:日本年金機構

いつから老齢厚生年金は減額されるの

減額が開始される時期は、社会保険の手続きと連動します。

社会保険の手続きと連動するのは、減額の計算に社会保険料の計算に使用されている標準報酬月額が関係しているからです。

年金が減額される時期は2つに分けられます。

(1)社会保険に加入した月
「総報酬月額相当額」と「基本月額」の合計金額が基準額(特別支給の老齢厚生年金は28万円。本来の老齢厚生年金は47万円)を超える場合は、社会保険に加入した月から特別支給の老齢厚生年金が減額されます。

(2)標準報酬月額が変動した月
標準報酬月額が変動すると、「総報酬月額相当額」も変動するので、年金が減額される可能性があります。標準報酬月額が変動する場合は、2つあります。

・算定基礎届
・随時改定

算定基礎届は、毎年7月に提出を行い、9月からの標準報酬月額の決定が行われます。
9月からの標準報酬月額の決定なので、9月分から年金額が減額される可能性があります。

随時改定は、給与の変動から3ヶ月を経過した月に標準報酬月額が変更されます。
随時改定の手続きが行われる場合は、給与の変動の3ヶ月後の月分から年金が減額される可能性があります。

2022年4月からの老齢厚生年金の減額の計算方法

65歳からの老齢厚生年金の計算方法のみとなります。特別支給の老齢厚生年金の収入基準額が28万円から47万円に引き上がります特別支給の老齢厚生年金を受給されている方には非常にメリットがありますが、恩恵をうける人は限られています。

会社役員で満額年金を受給できる方法

会社役員で報酬がある方で年金が停止されている方については、非常勤役員になることをお勧めします。

なぜなら、年金の減額は社会保険の手続きと連動しているからです。

上記記載のとおり、減額の計算に社会保険料の計算に使用されている標準報酬月額が使用されているからです。

非常勤の役員になれば、社会保険加入の対象外になるため、総報酬月額相当額がないことになるため、年金が満額支給される可能性があります。

非常勤役員については、以下のリンクを参照してください。

非常勤役員の社会保険適用はどうなるの?

受給開始時期の選択肢の拡大

2022年4月より繰下げ受給の上限年齢の引上げ

・現行70歳の繰下げ受給の上限年齢を75歳に引き上げる(受給開始時期を60歳から75歳の間で選択可能)。
(改正法施行時点で70歳未満の者について適用)
・繰上げ減額率は1月あたり▲0.4%(最大▲24%)、繰下げ増額率は1月あたり+0.7%(最大+84%)。
(それぞれの期間内において、数理的に年金財政上中立を基本として設定)
・上限年齢(現行70歳)以降に請求する場合の上限年齢での繰下げ制度についても、連動して75歳に見直す。
(75歳以降に繰下げ申出を行った場合、75歳に繰下げ申出があったものとして年金を支給することとする)

受給年金開始時期の選択肢の拡大

引用:厚生労働省

2023年4月より70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度の新設

・70歳以降80歳未満の間に請求し、かつ請求時点における繰下げ受給を選択しない場合、年金額の算定に当たっては、5年前に繰下げ申出があったものとして年金を支給する。
(繰下げ上限年齢を70歳から75歳に引き上げることに伴い、5年以上前の時効消滅した給付分に対応する繰下げ増額)

勘違いしている方が多いのですが、老齢厚生年金が支給停止されている場合は繰り下げとはならないため、年金額は増加しません。

雇用保険の高年齢雇用継続給付について

今回の年金改正で議論になった、雇用保険の高年齢雇用継続給付は(60歳になって賃金が低下した場合に、60歳時点の賃金に対し最大15%を支給するもの)、15%から10%への減額を検討されましたが、見送りとなりました。

ただし、2021年4月からは現状65歳までの雇用継続義務を70歳までに引き上げることを努力義務としました。現状努力義務ですが、今後の年金財政を考えると、70歳までの継続雇用が義務化されることとなると思います。それと伴に高年齢雇用継続給付の支給率も変わっていくことが考えられますので、賃金体系の変更も検討されたほうがよいと思います。

まとめ

在職者の特別支給の老齢厚生年金の減額の計算方法が変更になり、対象者の手取り額が増えることになります。

今までは給与を増額してもその分、年金額が減額となるので働く意欲も削がれていました。今回の制度変更によって、給与を増額すればその分手取りも増える仕組みになりましたで、高齢者の勤労意欲を引き出せる仕組みを創り易くなりました。

今回の改正を機会に高齢者の賃金制度を見直してはいかがでしょうか。

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