2024年よりトラック運転者の労働時間等改善基準告示が変更になります。!!!
改善基準告示とは
タクシー、バス、トラック等の自動車運転者の労務管理の主な問題は、長時間労働です。また、長時間労働による負担から、従業員本人の健康問題をはじめ、交通事故などの発生を引き起こす要因ともなるなど、重要度も影響度も社会的に非常に大きい問題です。
そのため、自動車運転に従事する従業員を守るために、厚生労働省により「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告知)が定められました。各企業は、この基準に準じて、ドライバー業務に従事する従業員の働く環境を整え、対応しています。
自動車運転者と一口に言っても、荷物の配送、乗客を乗せるなど、運転目的が異なります。そこで、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準告示」は、その業種、運転する車両の種類ごとに、「トラック運転者」、「バス運転者」、「タクシー運転者」に対するものが定められています。
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件」(令和4年厚生労働省告示第367号)により2022年12月23日に改正され、2024年4月1日から適用されます。
ここでは、「トラック運転者の労働時間等の改善のための基準告示」について説明します。
拘束時間・休息期間とは
改善基準告示は、自動車運転者の労働の実態を考慮し、拘束時間、休息期間等について基準を定めています。
(1)拘束時間
始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む。)の合計時間をいいます。
(2)休息期間
勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間をいいます。
拘束時間の限度
(1)1ヵ月の拘束時間
①1ヵ月の拘束時間は原則として284時間が限度です。
②ただし、毎月の拘束時間の限度を定める書面による労使協定を締結した場合には、1年のうち6ヵ月までは、1年間の拘束時間が3,400時間を超えない範囲において、1ヵ月の拘束時間を310時間まで延長することができます。この場合において、1か月の拘束時間が 284 時間を超える月が3か月を超えて連続しないものとし、1か月の時間外・休日労働時間数が 100時間未満となるよう努めるものとすることになっています。
(労使協定で定める事項)
・協定の適用対象者
・1年間について毎年の拘束時間
・当該協定の有効期間
・協定の変更の手続等
(2)1日の拘束時間と休息期間
①1日(始業時刻から起算して24時間をいいます。以下同じ)の拘束時間は13時間以内を基本とし、これを延長する場合であっても15時間が限度です。ただし、自動車運転者の1週間における運行がすべて長距離貨物運送(一の運行(自動車運転者が所属する事業場を出発してから当該事業場に帰着するまでをいう。以下同じ。)の走行距離が 450㎞以上の貨物運送をいう。以下同じ。)であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合、当該1週間について2回に限り最大 拘束時間を 16 時間とすることができるとされています。
②最大拘束時間まで延長する場合であっても、1日についての拘束時間が 14時間を超える回数 をできるだけ少なくするよう努めるものとすると定められています。
③休息期間は、勤務終了後、継続 11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとされています。ただし、自動車運転者の1週間における運行がすべて長距離貨物運送であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合、当該1週間について2回に限り、継続8時間以上とすることができる。この場合において、一の運行終了後、継続 12時間以上の休息期間を与えるものと定められています。
運転時間について
(1)運転時間
運転時間は、2日を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり44時間を超えないものとしています。
(2)連続運転時間
貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の連続運転時間(1回が概 ね連続 10 分以上 で、かつ、合計が 30 分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間をいう。)は、4時間を超えないものとする。当該運転の中断は、原則休憩とする。
(※)通達において、「概ね連続10分以上」とは、例えば、 10分未満の運転の中断が3回以上連続しないこと等を示すこととする。
ただし、サービスエリア、パーキングエリア等に駐車又は停車できないことにより、やむを得ず連続運転時間が4時間を超える場合には、 30分まで延長することができるものとする。
予期し得ない事例
事故、故障、災害等、通常予期し得ない 事象に遭遇し、一定の 遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制の適用に当たっては、その対応に要した時間を除くことができます*。勤務終了後の休息期間は、継続 11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものと定められています。
※予期し得ない事象とは以下のことをいう
・運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合
・運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合
・運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された 場合、道路が渋滞した場合
・異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合
※運行日誌上の記録に加え、客観的な記録(公的機関のHP情報等)が必要。
特例について
(1)休息期間の分割の特例について
業務の必要上、勤務終了後、継続9時間以上 の休息期間を与えることが困難な場合には、当分の間、一定期間における全勤務回数の2分の1を限 度に、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。この場合において、分割された休息期間は、1日において 1 回当たり継続3時間以上、合計 10時間以上でなければならないものとされています。
(※)長距離貨物運送に従事する自動車運転者であって、1週間における運行がすべて長距離貨物運送であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合は継続8時間以上。
なお、一定期間は、1か月程度を限度とする。分割は、2分割に限らず、3分割も認められるが、3分割された休 息期間は1日において合計 12時間以上でなければならないものとされています。この場合において、休息期間が3分割される日が連続しないよう努めるものとされています。
(2)2人乗務の特例
1人の運転者が 1日に運転できる時間は決められていますので、長距離の運行ではどうしても不可能な場合があります。そのような場合にはやむを得ず運転者を 2人乗務させることで対応します。2 人で交替しながらの運転なので連続運転時間や 1日の運転時間を守りながら運行することができます。2人乗務(ただし、車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る。)の場合は、1日の最大拘束時間を 20時間まで延長し休息期間を 4時間まで短縮することができます。
ただし、車両内の設備が次のいずれにも該当する車両内ベッドまたはこれに準ずる設備(以下、車両内ベッド等と言います)であるときは拘束時間を最大24時間まで延長できる。
また、車両内ベッド等で8時間以上の仮眠を与える場合は、拘束時間を最大28時間まで延長できる。この場合、一の運行終了後、継続して11時間以上の休息期間を与えること。
・車両内ベッドは長さ198センチ以上かつ幅80センチ以上の連続した平面である
・車両内ベッドはクッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものである
(3)隔日勤務の特例(業務の必要上やむを得ない場合)
2暦日における拘束時間は、21 時間を超えてはならないものと定められています。ただし、 勤務終了後、継続 20 時間以上の休息期間を与えなければならないものとされています。
【例外規定】
事業場内仮眠施設又は使用者が確保した同種の施設において、夜間に4時間以上の仮眠時間を与える場合には、2週間について3回を限度に、この2暦日における拘束時間を 24時間まで延長することができます。この場合においても、2週間における総拘束時間は 126 時間(21時間×6勤務)を超えることができないものとされています。
(3)フェリーに乗船する場合の特例
フェリーに乗船している時間は、原則として、休息期間として取り扱われますが、その場合、休息期間とされた時間を与えるべき休息期間の時間から減ずることができるますが、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはならないものとされています。
フェリーの乗船時間が8時間(※)を超える場合には、原則としてフェリー下船時刻から次の勤務が開始されるものとされています。
(※)2人乗務の場合には4時間、隔日勤務の場合には 20時間
休日労働について
休日労働は2週間について1回を超えないものとされています。また、当該休日労働によって、上記に定める拘束時間の限度を超えないものとさだめられています。
まとめ
2024年から自動車運転業務に関し、時間外労働を年間960時間に制限することが定められています。一般産業の働き方改革において、勤務間インターバルが議論されているという追い風を受け、自動車運転者の休息期間の問題が改めて俎上に載せられることとなりました結果、休息期間は基本11時間下限は9時間とされました。また、年間、1ヵ月の拘束時間も短くなりました。
今回の改善基準告示の改正は、運送事業者さんには大打撃になるようなものではありませんが、今後、徐々に自動車運転者の拘束時間は短くなって行くものを思われます。そのためにも、積載率の工場、共同運送、荷待時間の短縮を推し進め生産性の工場を推進していきましょう。