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2023年中小企業の割増賃金が50%に引き上げ!!! 今後の対策とは

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割増賃金引上げ
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資金調達コンサルタント/社会保険労務士 大学卒業後、中小企業支援の志を持って北海道拓殖銀行に入行。融資業務を担当して経営を学ぶ必要性を感じ、行内選抜を経て、日本生産性本部主催、経営コンサルタント養成基礎講座に出向。認定経営コンサルタント資格取得をして銀行に戻るも、経営破綻。中央信託銀行に就職したが、中小企業支援への想いは忘れられず、悶々とした日を過ごす。 その間、社会保険労務士、行政書士、FP1級、宅建士を取得し、独立を意識する。 55歳を機に三井住友信託銀行を退職し、札幌商工会議所の経営指導員を経て独立。 若き入行時の志を現在実行中。

 

割増賃金引上げ

 

 

割増賃金引上げの内容

 

2010年に施行された労基法の改正で、割増賃金率の引き上げが行われました。

法定時間外労働が月60時間を超える場合、割増賃金率を50%と新たに定めたものの、こちらが適用されるのは大企業のみで、中小企業は当面の間適用は猶予されていました。

しかし、2023年4月より、中小企業においても大企業と同様に、月60時間を超える残業割増賃金率が50%へと引き上げられることとなりました。

下記図を参照してください。

 

割増賃金50%引き上げ

 

深夜・休日労働の取扱い

 

深夜労働の場合

月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。

法定休日労働の場合

月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。
(※)法定休日労働の割増賃金率は、35%です。

 

割増賃金引上げにまでにやっておくべきこと

 

法定割増賃金率引き上げによって、企業には人件費の変動などの影響が生じます。そのため、法定割増賃金率引き上げまでに企業が行っておくべき対応について考えて挙げていきます。

 

労働時間の把握

 

まずは、労働者の現状の労働時間が適正であるかを確認します。業務内容の整理から始め、業務フローの整理、業務ごとの担当者の確認を行うと良いでしょう。労働者ひとり当たりの仕事量に偏りがある場合は是正するようにしましょう。これにより、時間外労働時間が平準化され、60時間を超える労働者が減るはずです。それでも60時間を超える労働者が多くいる場合は、新たに労働者を雇い入れることも考慮しましょう。まだ施行までに時間があるので、新制度の下での人件費を計算するなどして、最適な方法を探るようにします。

 

勤怠システムの導入の検討

 

勤怠管理システムを活用して毎月や毎年の労働時間を可視化し、時間外労働が多い月や部署を特定しましょう。これらの特定は人員配置の見直しに役立つだけでなく、自社の働き方にあった勤務制度の検討材料にもなります。

 

労働時間の削減対策

 

自社の労働時間を把握、可視化した上で、月の時間外労働時間が60時間を超えないような対策を講じます。月の労働時間の把握した上で、余分な時間外労働が多い傾向がある、または業務の進め方に課題があると判断した場合は残業の申請制を採用しましょう。「時間外労働をできるだけ減らせるよう、業務の進め方を工夫する」という意識の醸成につながります。

このほかにも、労働時間が他よりも多い部署があった場合には管理職や部署メンバーにヒアリングした上で、業務量の調整や必要業務の精査などの見直しを行います。全社的に時間外労働を減らすための文化を根付かせたい場合はノー残業デイを設け、会社としての姿勢を明確にするのもおすすめです。

 

代替休暇の検討

 

代替休暇とは、1か月に60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、60時間を超える労働時間の割増賃金に代えて有給休暇を与えるという制度です。制度の利用には、労使協定を結ぶ必要があります。労使協定を結んだからと言って、労働者に代替休暇の利用を義務付けることはできず、代替休暇を取得するか否かの判断は労働者に委ねられます。

代替休暇の時間数は以下のように計算されます。

代替休暇の時間数=(1ヶ月の法定時間外労働時間-60)×換算率

なお、換算率とは、「代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率」と「代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率」の差を指します。

例として、時間外労働の割増賃金率が30%で、60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%である場合を考えてみましょう。時間外労働を80時間行ったとすると、規定の60時間を超えた20時間分において、60時間を超えたことによる割増賃金率の増加分である20%分を割増賃金として支払う代わりに、20時間の20%である4時間分の有給休暇を与えることができます。

ただし、原則として60時間を超えることによる法定割増賃金率の増加分のみしか休暇として代替できないという点に注意が必要です。また、60時間を超えた月の末日の翌日から2ヶ月以内に与えなければなりません。加えて、この代替休暇は法定割増賃金率引き上げ後にしか利用できません。労働者の健康状態を守るためにも、利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

就業規則の変更

 

1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金率と1か月の起算日については、労働基準法第89条第1項第2号に定める「賃金の決定、計算及び支払の方法」に関するものです。この部分に変更がある場合は、割増賃金率50%の引き上げに合わせて就業規則自体を変更し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

モデル就業規則から
(割増賃金)
第○条 時間外労働に対する割増賃金は、次の割増賃金率に基づき、次項の計算方法によ
り支給する。
(1)1か月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次のとおりとする。この
場合の1か月は毎月1日を起算日とする。
① 時間外労働60時間以下・・・・25%
② 時間外労働60時間超・・・・・50%
(以下、略)

 

勤怠管理システムの導入の検討

 

労働者の労働時間の把握については労働安全衛生法労働安全衛生法第66条の8の3により義務づけられています。

具体的な方法は厚生労働省が定めた労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインに記載されています。

以下参照です。

(1)始業・終業時刻の確認及び記録
使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。
(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。
ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行
うこと。
イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。
オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる 36 協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

以上のガイドラインから、労働時間の把握については、労働者の人数が増えるとかなり煩雑な作業となります。また、在宅勤務が多くなっている中での勤務時間管理をどのようにするのかも悩ましい状況です。そこで新しい勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。出社したときに出社時刻を紙に記入するなど、個々人の知識や作業に依存した方法だと、どうしてもミスや手違いが起きてしまいます。従業員や管理職がミスした場合、人事担当者がミスを見つけて修正をお願いすることになるため、二度手間です。

その点、『出社後に各自のパソコンを使って1クリックで打刻できる』『スマホのアプリを使っつて出退勤を記録できる』『職場の入り口に端末を置き、ICカードをタッチして出退勤を付ける』といった方法で出勤時刻や退勤時刻を管理することをおすすめします。

こうすることで、「出退勤を付ける」という作業の負担を減らせます。クラウド型の勤怠管理システムなら、月額課金制なので初期費用を安く抑えられるのもポイントです。

登録したデータは強固なセキュリティーで保護されますし、バックアップも充実しています。勤怠管理以外の機能が搭載されている勤怠管理システムなら、人事としての仕事も一部削減することができるでしょう。

 

助成金、補助金の活用

 

生産性向上にはシステム投資、設備投資は必要不可欠となります。そこで、厚生労働省の助成金、経済産業省の補助金を利用することをおすすめします。代表的なものは以下の3つです。

業務改善助成金

働き方改革推進支援助成金 労働時間短縮・年休促進支援コース

IT補助金

これらの、助成金、補助金については、以下リンクを参照ください。

業務改善助成金

 

まとめ

 

2023年より中小企業にも割増賃金の引上げが適用されます。具体的な業種としては、運送事業者、医療機関等の人件費の増加が予想されます。割増賃金率引き上げの負担を減らすためには、会社や従業員の負担が大きくなることがわかります。そう考えると、有効な解決策は、残業時間を減らしつつ、仕事単価を引き上げる=生産性の向上によって割増賃金率の引き上げをカバーする、ということになるでしょう。

そのためには、仕事(職務)の棚卸しをして、能率の良し悪しを割り出すことがポイントになります。例えば会議資料のページ数削減、作成時間圧縮などや、便利なツールを使って時間を短縮する可能性を探るといったことが挙げられます。

この機会に社内の無駄な仕事を洗い出してみてはいかがでしょうか。

 

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