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2022年4月中小企業にもパワハラ防止法適用。課せられる義務と罰則

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パワハラ
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資金調達コンサルタント/社会保険労務士 大学卒業後、中小企業支援の志を持って北海道拓殖銀行に入行。融資業務を担当して経営を学ぶ必要性を感じ、行内選抜を経て、日本生産性本部主催、経営コンサルタント養成基礎講座に出向。認定経営コンサルタント資格取得をして銀行に戻るも、経営破綻。中央信託銀行に就職したが、中小企業支援への想いは忘れられず、悶々とした日を過ごす。 その間、社会保険労務士、行政書士、FP1級、宅建士を取得し、独立を意識する。 55歳を機に三井住友信託銀行を退職し、札幌商工会議所の経営指導員を経て独立。 若き入行時の志を現在実行中。

パワハラ防止法

 

 

 

パワハラ防止法とは

パワハラ防止法の正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)といい、2019年5月に改正され、職場におけるパワーハラスメント防止対策が事業主に義務付けられました。このことにより労働施策総合推進法がパワハラ防止法と呼ばれるようになりました。

 

パワハラ3つの要素

 

厚生労働省は、職場におけるパワハラについて3つの要素6つの代表的な言動の類型を挙げています。

<労働施策総合推進法(抄)>

(雇用管理上の措置等)

第30条の2 事業主は、職場において⾏われる優越的な関係を背景とした⾔動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を⾏ったこと⼜は事業主による当該相談への対応に協⼒した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

3つの要素とは以下ことを指す。
① 優越的な関係を背景とした⾔動であって、
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの
であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で⾏われる適正な業務指⽰や指導については、職場におけるパワーハラスメンには該当しません。

職場とは

事業主が雇⽤する労働者が業務を遂⾏する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂⾏する場所であれば「職場」に含まれます。勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延⻑と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して個別に⾏う必要があります。

●「職場」の例
・出張先・業務で使⽤する⾞中
・取引先との打ち合わせの場所(接待の席も含む) 等

労働者とは

正規雇⽤労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇⽤労働者を含む、事業主が雇⽤する全ての労働者をいいます。
また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇⽤する労働者と同様に、措置を講ずる必要があります。

パワハラ防止法の施行日

パワハラ防止法の施行日は次の通りです。
■大企業 2020年6月1日
■中小企業 2022年4月1日

パワハラ防止法施行後は、企業は職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上、必要な措置を講じることが義務となります。

パワハラの6つの累計類型

身体的な攻撃

① 殴打、足蹴りを行う
② 相手に物を投げつける

精神的な攻撃

① 人格を否定するような言動を行う。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む。(★1)
② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う
④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信する

人間関係からの切り離し

① 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする
② 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる

過大な要求

① 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる
② 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する
③ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる

過小な要求

① 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる
② 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない

個の侵害

① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする
② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する(★2)

★1 相⼿の性的指向・性自認の如何は問いません。また、⼀⾒、特定の相に対する言動ではないように⾒えても、実際には特定の相⼿に対して⾏われていると客観的に認められる言動は含まれます。なお、性的指向・性自認以外の労働者の属性に関する侮辱的な言動も、職場におけるパワーハラスメントの3つの要素を満たす場合には、これに該当します。
★2 プライバシー保護の観点から、個の侵害の②のような機微な個⼈情報を暴することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要です。

 

企業に求められているパワハラ防止措置

事業主が雇用管理上講ずべき措置として、主に以下の措置が厚生労働大臣の指針に定められています。事業主は、これらの措置について必ず講じなければなりません。
なお、派遣労働者に対しては、派遣元のみならず、派遣先事業主も措置を講じなければならないことにご注意ください。

事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

・パワーハラスメントの内容
・パワーハラスメントを⾏ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
・パワーハラスメントの⾏為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

・相談窓⼝をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
・相談窓⼝担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。パワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、パワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。

職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

・事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
・事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に⾏うこと。
・事実関係の確認ができた場合には、⾏為者に対する措置を適正に⾏うこと。(※)
・再発防止に向けた措置を講ずること。
行為者に対する措置については、就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるハラスメントに関する規定等に基づき、⾏為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。併せて事案の内容や状況に応じ、被害者と⾏為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と⾏為者を引き離すための配置転換、⾏為者の謝罪等の措置を講ずることが望ましいとされている。

併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)

・相談者・⾏為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること。
・事業主に相談したこと、事実関係の確認に協⼒したこと、都道府県労働局の援助制度を利⽤したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

パワハラがあった時の対応の流れ

相談・苦情の対応の流れの例

パワハラ相談

 

 

パワハラ防止法に違反した場合の罰則規定

パワハラ防止法には違反した場合の罰則規定はありません。

しかし、助言、指導及び勧告並びに公表について規定されており、規定に違反している事業者に対しては、助言、指導または勧告をすることができ、それに従わなかった場合はその事実が公表される場合があります。

パワハラに対する防止措置が義務化されている以上、それを怠った場合は、指導勧告や事実公表の可能性があり、企業の社会的信用を失いかねません。

まとめ

令和2年度個別労働関係紛争解決制度施行状況

令和2年度の個別労働関係紛争の内容を見ていくと、民事上の個別労働紛争相談、都道府県労働局長による助言・指導、あっせん申請の内容ともに次のような内容が多くなっています。
①いじめ・いやがらせ
②解雇
③労働条件の引下げ
④自己都合退職
⑤退職勧奨
⑥雇止め
⑦出向・配置転換
⑧その他の労働条件  
 また、都道府県労働局長による助言・指導に関して見て行くと、申出人は労働者が99.6%と大半を占める。また、事業所の規模については中小企業において、個別の労務管理に関する問題が多くみられるところであります。
パワハラ防止法が施行されることにより、今後パワハラに関する相談も多くなってくるものと考えられます。

パワハラ対策を実施するメリット

労務コンプライアンスを遵守する流れは今後加速することが考えられ、ここでしっかりとパワハラ対策をすることによって、労務トラブルの増加を防ぐことができます。また、人材の流出を防止でき、採用面においても「ブラック企業」ではないことを若年層にアピールすることができれば有利になることになります。

 

 

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