契約社員と契約を更新しない時(雇止め)に注意すること!!!
契約社員とは
毎日の働き方は基本的に正社員と同じですが、雇用主との契約によって勤続期間に期限を設けている社員を指しています。1回の契約による勤続期間は3年が上限となっており、契約満了の時点で更新を行うか契約終了になるか、いずれかの対応が必要になります。
ただし、契約期間が通算で5年を超過していて所定の要件を満たしていれば、現在の有期労働契約の契約満了日までにに「無期雇用(期限を設けない雇用契約)」への転換を契約社員側が申し出られます。申し出があれば、雇用主はその契約社員を無期雇用に転換して雇用を継続することが義務付けられています。
簡単にご説明すると、「同じ職場で契約社員として5年以上働いた人は、現在の有期労働契約の満了日までに、無期雇用契約への転換を申し出れば、無期雇用の契約へ転換しなければならない」ということとなります。
更新する時に注意すること
有期雇用契約を結ぶ場合、労働条件通知書を交付する必要があります。まずは、この労働契約が有期なのか無期なのかを明確にし、有期であれば、その期間を定めます。さらに有期契約であれば、更新しないのか、更新することが前提であれば、その判断基準は何かを明示しなければなりません。「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告知357号)に示されています。
労働条件通知書には契約更新の有無を明記しますが、一般的には下記の3つのパターンです。
① | 契約は自動的に更新する |
② | 更新する場合があり得る |
③ | 契約の更新はしない |
①については、契約が自動更新となり、期間の定めのない労働契約として取り扱われるので注意が必要です。あくまでも有期雇用として雇用契約を締結するのであれば、①は絶対に選択しないことです。
②についてはケースバイケースで更新を判断するという経営者にとっては、有利な選択です。しかし、雇止めの問題の1つに、②の基準が曖昧なため、トラブルに発展する可能性があります。一般的には以下のような更新の判断基準を定めています。
イ | 契約満了時点の業務の有無または業務量 |
ロ | 本人の職務能力、就労成績、健康状態、解雇、懲戒事由該当 |
ハ | 従事している業務の進捗状況 |
二 | 会社の経営内容、経営悪化や大量の業務削減なのどの経営状況 |
②は、1年を超えて継続雇用している場合、または3回以上労働契約が更新されている場合で、当該契約を更新しないときは、少なくとも契約期間の満了する日の30日までに雇止め予告をする義務があります。
③については、契約を更新しないことが明確になっているので、期間満了での雇用契約終了には、別段の問題はありません。ただし、③を選択しているにも関わらず、更新を行うと、契約内容が実態に伴っていないため、①や②として判断される可能性もあります。あくまでも実態に伴った内容で有期雇用契約を締結してください。
また、契約更新の満了を迎える労働者については、事前に面談などを実施し、更新するか否かを明確に通知してください。更新する場合は、更新日前にあらたな労働条件通知書、更新しない場合は、雇止通知書を交付してください。
雇止め制限法理の明文化
1.労働契約法19条により、①期間の定めのある労働契約(有期契約・期間雇用)が反復更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合、または②期間の定めのない契約と実質的に異ならないとまではいえないものの、雇用関係継続への合理的な期待が認められる場合には、雇止めには、客観的合理的な理由及び社会通念上相当と認められることが必要となる。
2.労働契約法19条に基づき、雇止めが無効とされた場合には、従前の労働契約が更新される。
3.雇止めの効力を判断すべき基準については、正社員とは合理的な差異が認められ、人員整理において正社員に先立ち雇止めすることも許される。
①のように有期雇用契約であっても、その実態が無期雇用契約と異ならないと判断される場合は、解雇権濫用の法理が類推適用され、特段の事情がない限り、雇止めが認められなくなります。この有期性と無期性の違いをどのように判断するかは、次の4点がポイントとして考えられます。
① | 業務の種類・内容・勤務形態(恒常的・臨時的・正社員との同一性) |
② | 当事者間の主観的態様(当事者間の言動、認識、更新期待権) |
③ | 更新の有無・回数、勤続年数、更新手続きの実態 |
④ | 同様の地位にある他の労働者の更新状況(過去の実績) |
①については、業務が恒常的なものか臨時的なものか、正社員と同一か否かという点です。
②は、更新を期待させるような言動があったかどうかです。有期契約社員に更新期待権があれば、実質的無期契約と判断される可能性があるので、「基本的には毎回更新するから」などの更新を約束するような言動は避けるべきです。
③については、その状況の実態を判断します。そのようなケースはリスク大です。反復更新が長期化している、採用時は有期雇用契約書交わしていたが、そのうち交わさなくなった、更新の有無の欄が記載されていない、詳細な説明なく有期雇用契約書に捺印だけしてもらうなど、このようなずさんで曖昧な更新手続きを行っていると、実質的には無期雇用契約として扱われる可能性があります。この点を留意した厳格な更新手続きが必要不可欠です。
④については、同じ有期雇用社員の雇止めが過去にあったのか、という点です。前例がなく、他の有期社員がほとんど全員更新されている実態があれば、実質的無期契約として判断される可能性がでてきます。
雇止めのトラブルを回避するには
究極の手段は、更新に上限を設けることです。雇止めの最大の原因は、有期雇用社員が期間満了による契約終了を認識していなかったことです。いくら更新の都度、書面で雇用契約書を取り交わしていても、その通算期間が長期化すれば、次回の更新を期待するのは自然なことです。例えば、あらかじめ更新限度を3年や5年とし、運用についても厳格にそのとおりにすれば、更新の期待権はないと考えられます。
有期雇用社員を採用する目的が臨時的なもの、経営悪化時の人件費をコントロールするためんじょものであれば、更新限度を定めることがもっとも得策な手段だといえます。
まとめ
正社員と違って、臨時的な仕事をしてもらうために契約社員と採用した場合、その雇用関係が比較的簡易な採用手続で締結された短期の有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断するべき基準は、終身雇用の期待のもとに期間の定めのない労働契約を締結している場合とはおのずと合理的な差異があります。よって、会社の業績悪化による人員削減の必要性が生じた場合には、正社員に先立って有期契約労働者の削減をはかるのは社会的にみて合理的であります。
一方、正社員と比べて遜色のない業務に従事し、基幹労働力化している有期契約労働者については、人員整理の必要性をはじめとする要件が厳しく吟味されます。
会社の業務上の判断になりますが、雇用調整の手段のために有期契約労働者として採用し、正社員と同様の業務につかせた場合には、雇止めをが認められない可能性が高いので、担ってもらう仕事の目的によって雇用形態を多様化する必要があります。