社員がうつ病になった時の対応。休職制度について詳しく解説。
休職とは
ある従業員について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約を維持しながら労務の提供を免除することまたは禁止することです。
休職中の従業員は労務を提供しないため、基本的に給料は発生しません(会社独自の給与補償制度がある場合を除く)。しかし、社会保険は継続しているため、会社側は会社負担分の社会保険料を支払い続ける必要があります。
休職には目的や内容を異にする様々な制度が存在します。
主要なものとしては「傷病休職」(病気休職)があります。これは業務外の傷病による長期欠勤が一定期間(3ヵ月~6ヵ月)に及んだ時に行われるもので、休職期間の長さは通常勤続年数や傷病の性質に応じて異なっています。
この期間中に傷病から回復し就業可能となれば、休職は終了し、復職となります。
これに対し、回復せず期間満了となれば、自然(自動)退職または解雇となります。
この制度の目的は解雇猶予です。
休職制度を設けるには以下の点を就業規則に明記しておくことをお勧めします。
制度の目的・種類を明確にする
休職制度は、福利厚生の1つです。
社員が私傷病、家族の看護、留学等の理由で一定期間、就業不能の場合に終了が免除されます。
代表的な休職制度としては、「私傷病休職」「出向による休職」「ボランティア休職」「留学休職」「その他理由による休職」です。
「その他理由による休職」は会社が適当と認めた場合のみに有効です。
私傷病の場合は治療専念が主な目的です。
また、一般的な私傷病休職ではなく、うつ病などの精神疾患に対する休職規定は別途規定が必要です。
通常は「業務外の私傷病により」と一括りで規定されていますが、あえて「うつ病の精神上の病気、メンタルヘルス不全により通常の労務提供ができないとき」との別の種類として規定することをお薦めします。
休職制度は、職場復帰が前提なので、職場復帰の見込みのない社員については休職対象外であることを明記してください。
適用範囲の基準を定める
一般的には正社員に適用します。試用期間中の社員や勤続年数が短い社員(例えば、勤続年数1年未満など)は、対象外にすべきです。ただし、その場合は就業規則で明記する必要があります。
パート社員については、対象外とするケースが多いです。しかし、期間の定めのないパート社員については、休職を適用させた方が得策でしょう。
手続きを規定する
休職する場合の手続きは2つあります。
1つ目が会社が「休職命令」を発令した時です。2つ目が社員が「休職願」の申出をした時です。会社は社員が私傷病などで欠勤し長期化するようであれば、その段階で休職を命じる必要があります。また、最初から長期化することが見込まれ、社員から申出があれば、その時点で休職を認めることができます。
この2つの手続きについて明確に規定することが必要です。
休職の起算日を設ける
休職の起算日は明確に規定しないと休職期間のカウントに影響します。よくある規定で「欠勤となり1ヵ月が経過したとき」などがありますが、うつ病など、欠勤や出勤を繰り返す症状の場合は、「1ヵ月経過」の起算日の始点が定まりません。推奨するのは、「会社が休職命令を発令した日」、「社員が休職願いをし、会社が認めた日」を起算日とすることです。当然、「休職命令書」や「休職願」「休職承諾書」などの紙ベースで手続きを行うことです。
休職期間を定める
一律に休職期間を設定する「一律型」と勤続年数に応じ休職期間を定める「勤続年数型」があります。役職者に対して休職期間を加算する方法もあります。
休職期間については、経営者の考え、会社規模、社員数等により自社に適した休職期間を設定することです。
社員が私傷病などで治療に専念する場合、どれくらい待てるのかをイメージすると分かりやすいでしょう。
パート社員を休職の対象にする場合の休職期間については、一律1ヵ月や2ヵ月などの無理のない設定をするのがいいでしょう。
休職中の労働条件を明確にする
トラブルを未然に防ぐため、休職期間中における労働条件の取扱いについて明確にする必要があります。例えば、①休職期間中の賃金は無給である(傷病手当金の説明)、②休職期間中は勤続年数に通算しない、③昇給・賞与の対象外となる、④退職金の算定基礎対象外となる、⑤自己の社会保険料(住民税)は会社に納付する、⑥休職期間中は年次有給休暇や特別休暇の取得はできない、⑦休職期間満了時までに休職事由が消滅しない場合は、就業規則により自然退職となるなど、休職中の取扱いを確認した内容を「休職における重要確認書」の書面にし、これを交付して本人に署名・捺印してもらうことです。
休職期間中の報告をさせる
月に1~2階程度来社し、医師の診断書を提出してもらい、定期的に休職者の現況を確認することで治療の経過などを把握し復職の見込時期などの判断材料にします。
復職の判断基準をルール化する
復職を判断するのは会社です。復職の前提となるのが、休職者の疾病が治癒しているかどうかです。
治癒しているか否かは、医学的な判断を要するので、主治医の診断書、意見聴取、産業医との面談などを行うことが必要不可欠となります。
主治医による判断は、休職者の病状をもっとも把握しているため、復職の判断材料としては、重視する必要があります。しかし、休職者が復帰して従事することになる業務内容については十分な知識がない可能性があり、主治医の判断のみで、本当の職務遂行できるまでに回復しているか疑問が残ります。そのため、会社としては、その主治医に聴取したり、産業医や会社が指定する医師の診断、その意見を参考に最終判断を行うことが必要です。
会社は休職者に対して、医師の診断書の提出義務やその医師への意見聴取に協力すること、場合によっては、産業医や会社指定の医師による診断についても受診する義務があることを規定化することを強くお薦めします。当然、社員が休職する際にこのルールを確認、理解していることを条件に休職を認めることです。
休職期間延長を規定する
休職期間満了で復帰できなければ退職扱いとなります。休職者の症状が治癒に向かっているなど、会社が特別な配慮が必要であると判断した場合は、猶予期間として「休職の延長」を規定するといいでしょう。
再休職時には休職期間を通算できるよう規定する
復職後6ヵ月以内に休職の原因となった同一理由ないし類似の理由により労務提供できない状態になった場合は、復帰を取り消し、休職させることを規定します。その場合は直前の休職期間に算入します。
まとめ
会社として大切なのは、調子の悪い社員が出てきても「見て見ぬふりをしないこと」と、該当社員を「追い込まないこと」。社員の状態がかなり悪くなってからの休職は、会社の評判を下げると同時に、最悪の場合には労災などのリスクもはらんでしまうからです。
このようにならないためにも、休職についてあらかじめ就業規則で定めておきましょう。ルールがあると手続きもスムーズです。そして何より、「後手後手の休職対応」に悩まされることが減ります。